ことわざ【俎上之肉】 まさか! 中国で覚悟の入院 剃毛はしたけれど…

人生で初めて入院を中国で経験しました。何せ突然の狭心症による緊急事態。日本へ帰国して治療することもできず、ドキドキしながらの入院生活が二週間余り。そしていよいよカテーテルでステントを挿入するという手術の前日、準備のために剃毛をされました。そして主治医が病室に来て言うには「機械が故障した。一週間待ってくだい」とのこと。なぬ、もう毛がないんだけど…

悠々自得

 まったく思いもしなかった狭心症(中国名:心绞痛)の発病、入院で私の周囲も大騒ぎ。合弁パートナーは私が入院した病院のトップの医師を主治医として手配してくれました。面倒見の良い人たちが多く本当に感謝です。
さて、その主治医はちょうど海外の学会に出張中とのことで、帰国するまで手術を待つことになりました。

 本来ならば一週間程度で手術を終え退院できるそうですが、主治医が不在ではどうしようもないので帰りを待つことにしました。その日から医師の帰るまでの間、毎日ベッドに寝て点滴です。心臓への負担を和らげるため点滴の落ちるスピードが遅いのだそうで、終わるまで長いときは8時間ほどかかったときもありました。こちらから指名した医師が不在ということですから病院の看護師は「悠々自得」を決め込み急きもあわてもしません。でもしようがないですよね。と言うことで、淡々とただ点滴の毎日が続きました。

悵然 失するが若し

 点滴中はベッドから窓越しに空を流れていく雲をずっと見つめていました。でも、そんな日が一週間も続くと、果たしてここから出られるのだろうか、など思うようになり気が滅入ってきます。「悵然若失」という中国の言葉のように虚しくぼーっとした毎日でした。

 並行して、心電図、CT、MRI、それから聞いたことのない画像検査など、その病院で可能なすべての設備を使って検査を行い、「心紋痛」(日本では狭心症)と確定診断されました。冠動脈の一箇所が70%くらい塞がっているCT写真を見せられた時はゾッとしました。血流が悪い時に胸の違和感があったようです。

俎上の肉

 そして待つこと一週間、やっとその主治医が帰ってきました。早速、私の病室に回診をしていただき、翌日手術するとのお話でした。いよいよ私にとっては「乾坤一擲」の勝負の時がやってきたのです。と思ったのですが…

同時に手術の準備が始まり、看護婦さんの行き来などがあわただしくなってきました。手術は足の付け根からカテーテルを挿入し、冠動脈の狭窄している箇所にステントを施すPTCA治療です。

 そのため剃毛が必要で、若い看護婦さんがやってくれました。これが心底から恥ずかしかった! 翌日に備えた準備が整ったころ、主治医の先生が再び訪れ、「実はカテーテルの機械が故障していることがわかった。予備の部品は置いていないので緊急輸入するので、もう一週間待ってください」とのこと。私は「そんなこと言われたってもう毛が無いのに…」 近くにいた、看護師や会社の社員達と一緒に思いっきり笑われてしまいました。

 何事もシステマチックに動いている日本の病院とは違い、中国の病院ではアクシデントや想定外のことが続出。しかし所詮は「俎上の肉」、身を任せるよりありません。それをも受け入れ、(楽しむことは難しいが)こんなことがあるのかと感心することができれば、少しは気が楽になりますよ。

いよいよ手術

 翌日からまたもや点滴が続きました。一週間後、再び主治医が部屋に来て、「部品の交換が終わり故障は直った。明日手術します」ということになりました。そして主治医は続けて「でも貴方は三番目です」と。順番待ちの患者がいるのだと思いましたがそうではなかった… 医師は「前の二人の手術がうまくいけば、機械に異常はないということです。ですから安心してください」と。

 一瞬ユーモアかなと思いましたが、そんな場面でもなくどうも本心でそう言ったのだと思います。そのあと、看護婦さんがまた剃毛に訪れ、(二度目の今回ももちろん恥ずかしかった。)ようやく準備完了です。
 手術当日は精神安定剤を飲み手術に臨みました。局所麻酔ですので主治医と話をしながらの手術です。その先生は日本に二年間留学していたとのことで流暢な日本語を話しました。人生初の手術でしたが、おかげでずいぶん緊張をほぐしていただきました。手術自体は約40分で順調に終了し病室に戻りました。

 その日の夜は止血のため動けす、眠れませんでした。翌朝、止血帯が外されついにすべてが終わりました。その後、少しの養生のあと退院の日を迎え、久々に吸った外の空気がなんとすがすがしかったことは生涯忘れられません。

人生に無駄はない

 大学病院でもあり、医療機器は最先端のものが揃っていました。後日、一時帰国した折に、持ち帰った手術を記録したデーターを日本の医師に見せたところ、「すばらしい。医療設備も最先端のもので、うかうかしていると中国に追い越されそうだ」との評価でした。

 一週間程度の入院で済むところを、結局23日も要してしまいましたが、入院中にそれまでの中国での仕事を振り返り、今後どうしていこうかと考えるには恰好の期間となりました。この入院のおかげでその後の事業展開が一瀉千里となったのですから。人生には様々な出来事が起きるでしょうが、無駄なものは一切ない、ということですね。

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成功のヒント 中国のことわざ・格言

孤注一掷 / 乾坤一擲

◆中国語:孤注一掷   [ gū zhù yī zhì ]

◆出典:宋史(寇准传)

◆意味:有り金を全部はたいて勝負にかけるとの意。成功するか失敗するかという運を天にまかせて冒険するさま。「一か八か」の勝負に出る。

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悠悠自得 / 悠々自得

◆中国語:悠悠自得   [ yōu yōu zì dé ]

◆出典:冯梦龙(灌园叟晚逢仙女)

◆意味:ゆったりとしてこせこせしないさま。

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怅然若失 / 悵然 失するが若し

◆中国語:怅然若失   [ chàng rán ruò shī ]

◆出典:刘义庆(世说新语·雅量)

◆意味:怅然とは失意の意。失意のあまり恨みなげくさま。

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俎上之肉 / 俎上の肉

◆中国語:俎上之肉   [ zǔ shàng zhī ròu ]

◆出典:史记(项羽本纪)

◆意味:「俎」はまな板のこと。まな板の上にのせられ、料理されるのを待つ肉のこと。相手に全てを握られていて、身動きすら出来ない状態や状況のこと。「俎上之魚」ともいう。日本では「俎板の鯉」といいますが、中国では俎板の上には「肉」や「魚」であることが面白いです。

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