中国はずっと前からクールビズ ことわざ【奇想天外】の一手とは

夏の上海。日本と同じように梅雨があり蒸し暑い天気が続きます。ある日、外回りから会社に戻った営業社員が汗を拭いながらネクタイを着けています。確か、戻った時にはつけていなかったのに…

耳で聞くは目で見るに如かず

 私が赴任した7月の上海。そんな光景を会社内で見ました。でも、何かおかしい…

そこで彼らに聞いてみました。(もちろん通訳を介して)「皆さんはお客さんを訪問するときにネクタイは着けていないのか。何故、会社に戻ってからネクタイを着けるの? 出かけるときにネクタイを着けて、帰ってきたら外すのならわかるが、逆じゃないの…」と。

 彼らは、何を言ってるのかという雰囲気で、「この暑さの中でバスに乗って移動するのに、ネクタイを着けている方がおかしい。人から気がふれたのではと思われる」というのです。つまり、社内でネクタイをしていないと怒られるので、仕方なく会社に戻ったらネクタイを着けるのです。

 そこで翌日私も外出しバスに乗ってみました。当時のバスは冷房無しが標準(冷房付きの場合バス代が少し高い)でした。彼らの言っていることも無理はないことがわかりました。中国の古典には「耳で聞くは目で見るに如かず」とあります。冷房の効いたオフィスでは外回りの彼らの苦労に気がつかなかったのです。反省反省! 「この暑い季節にネクタイを要求するのは我が社と香港系の銀行だけだ」とも言ってました。

舟を刻み、剣を求む

 ならばということで一策を案じました。どうせできないことを要求しても意味がないし、だらしない恰好で大事な顧客を訪問するのも困ります。思い切って夏場限定のおそろいのTシャツを作りました。ロゴをあしらった「制服」です。内勤者も同じTシャツを着て暑い夏を乗り切ろうと訴えました。これ、結構受けました。

 今でこそ日本ではクールビズが常識ですが、当時は真夏でもスーツにネクタイが当たり前。ですから中国に赴任してからも日本と同じことを要求したのも頷けます。中国のことわざの「舟を刻み、剣を求む」と、旧態に拘泥し改めないことと同じようなもの。環境も習慣も異なる中国・上海に合わないことを要求するのは愚行です。中国では日本よりもずっとずっと前からクールビズをやっていたということです。

奇想天外な決起大会

 大連ではこんなことがありました。

業績が右肩上がりで好調に走っていたころ、さらに大きな目標とビジョンを掲げてジャンプアップに挑戦しようと幹部会議で決定したときのことです。

 全社員にそのことを徹底し理解を得るために、全員参加の決起大会をすることにしました。(中国では「決起」というと何やら不穏な団体のように誤解されかねないので、「誓師大会」と中国らしいタイトルにしました)

 気がかりだったのは、登壇者が威勢の良い決意を表するのはよいとしても、二百名の社員が一堂に会するのですから、間延びして緊張感が薄れ居眠りすることなどが容易に想像できたことです。

 そこで一計を案じました。大会の真ん中頃に若手女性社員にダンスを踊ってもらうことにしたのです。実はこれには背景があって、一つは中国人社員はみんなの前でコントやダンスなどを披露することに何の躊躇することもなく、むしろ大好きなことです。二つ目は当時、Kポップの女性アイドルグループが中国でも大人気。それを模した衣装も準備してもらい「なりきって」やってもらいました。もう一つは、私個人的にファンであったテレビのアナウンサーが歌った「跟我出发(私と一緒に出発だ)」という曲が、大会の主旨にぴったりだったことです。結果は大成功!

一格に拘らず

 日本本社から派遣され中国に赴任する人の中には日本での成功体験を持つ人が少なくないと思います。そのことに自負を持つのは問題ありませんが、それに固執すると失敗することになるかもしれません。何せ日本とは違う中国ですから。「一格に拘らず」と、決まった形式にこだわらないのがよいとのことわざが中国にあります。

 そのためには、言葉は良くありませんが組織の末端社員に目を配り、現場を自らの目で見て、成功を勝ち取る具体策を必死に考え実行することに尽きると考えます。誰にも考えつかないような奇想天外なことがちょうどいいのです。

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成功のヒント 中国のことわざ・格言

耳闻不如目见 / 耳で聞くは目で見るに如かず

◆中国語:耳闻不如目见   [ Ěr wén bù rú mù jiàn ]

◆出典:漢・劉向(説苑・政理)

◆原文:夫耳闻之,不如目见之;目见之,不如足践之。

◆意味:耳で聞くより実際に自分の目で確かめた方がよい。原文ではその後に、自分の身で実践する方がさらによい、とあります。実際の経験が重要であることの例え。

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不拘一格 / 一格に拘らず

◆中国語:不拘一格   [ bù jū yī gé ]

◆出典:龚自珍(己亥杂诗)

◆意味:決まった形式にこだわらない、との意。格局とは構造、仕組みなどのこと。

◆原文:我劝天公重抖擞,不拘一格降人才。(我天公に勧む、重ねて抖擻して、一格に拘わらず、人材を降せと。意味は「私は天子様にお願いしたい。 すべての利害を払いのけて身分などにはこだわらず、有為の人材を登用するべきだと」

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刻舟求剑 / 舟を刻み、剣を求む

◆中国語:刻舟求剑   [ kè zhōu qiú jiàn ]

◆出典:吕氏春秋(察今篇)

◆意味:舟に印を刻んで、ここから剣を落としたと主張したという故事。そんなことをしても何も解決しないのに、旧態に拘泥し改めないことの例え。

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