中国の元旦は【新年好】春節は【過年好】が似合う でも酒で失敗の季節 男には三欲あり
会社のある幹部社員。いつもと違って冴えない顔をしている。人づてに聞いてみると、昨夜酒を飲みすぎて途中から意識がなくなり、気がつくと持っていたはずのバッグや財布、着ていた背広上着などが無くなっていた、とのこと。やらかした失敗を悔いてしょげている…
乾杯に何を考える
幹部社員達との懇親の機会、得意先との会食などより一層コミュニケーションを深めるために食事を共にすることが多々あります。
出された料理をよりおいしくするのがお酒。同時に料理が酒を進めてくれる。そこに語らいがあり人との距離を縮めてくれる。
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問題はその人ときの間に乾杯が幾度もあることです。マイペースでちびちび飲るのは中国ではマナー違反です。一口飲みたくなった時には座の誰かを相手に「乾杯」。基本は飲み干すこと。もちろん他の人から乾杯を求められることが多くありますから、結局飲みすぎてしまうことになります。
日本で時に話題になる「路上寝」は中国では見かけませんが、「酒を飲むに酩酊を成さしむる莫れ」と泥酔を戒める中国格言を忘れないように。
兵法三十六計とお酒
酒に自信があろうとなかろうと、飲んでいるのは52度の白酒やワインのがぶ飲み。そんな乾杯の嵐にどう対応するのがよいのか?
自分がホストの場合は飲みつぶれては御役目失格です。中国赴任後あまり時間がたっていなかったころによくこう言われました。「飲みすぎて酔っぱらっただと? 本当の酔っぱらいは、自分で酔ったとは言わないものだ。さあさあもっと飲んで!」「まだまだ酔ってはいないだと? だったらもっと飲んで飲んで!」
どんな場面でも醜態をさらすわけにはいきません。もう駄目だと思ったら、白旗を上げて降参するのが一番。中国の兵法三十六計にも「走ぐるをもって上計とす」とあるではないですか。玉砕戦法は誰も褒めてはくれません。
危ないことがいっぱいの春節前
酒を飲む機会は年中ありますが、中でも多いのが元旦から春節にかけての間です。旧暦で動いている中国では一年の謝意を表し、新しい年もよろしくという席を設けるのには絶好の季節です。この時期、世間では元旦前から「新年好」と挨拶が交わされ、春節に入ったら「过年好(日本語表記は過年好)」に変わります。
つまり新暦の1月1日は新しい年をお祝いする「新年好」、旧暦の1月1日には正月を祝う「过年好」。言わばダブルスタンダードです。
どちらにしても日本人にとっては「新年おめでとう」には変わりないのですが、その使い分けができるとネイティブを感じることができます。
ただでさえ新年で浮ついていているのに、そこに酒が入ればどうしても人は冗舌になります。ここに失敗の落とし穴が待っています。中国の格言に「酒が入ると舌が出る」とあります。しゃべりすぎが原因で身を滅ぼすなんてことにならないようにしたいものです。
男の三欲
男の三欲とは飲む、打つ、買うだそうな。また、私の先輩は問題の裏には必ず酒、金、女の存在がある、といいました。それは何も日本に限ったことではありません。中国のことわざには「欲は度無きに生ず」とあります。欲望は規制がないことから生じるというのです。
であるならば、自己規制をする以外にはなさそうです。
一歩外に出ると人を惑わすことがいっぱい。溺れないように自己を高みに置くこと、常に自分を磨くことなど、中国で活躍しようと考える総経理にはやるべきことはたくさんあるのです…
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成功のヒント 中国のことわざ・格言
走为上计 / 走ぐるをもって上計とす
◆中国語:走为上计 [ zǒu wèi shàng jì ]
◆出典:南斉書(王敬则传)
◆意味:戦いを避けるのが最善の策略であるという策略。もし戦うことになっても、勝算がなければ戦わない方がよい。戦うことを始めた後も、不利と見たら退却することが肝要である。日本人が好きな(?)「当たって砕けろ」という考えかたは中国には存在しません。
饮酒莫教成酩酊 / 酒を飲むに酩酊を成さしむる莫れ
◆中国語:饮酒莫教成酩酊 [ yǐn jiǔ mò jiào chéng mǐng ding ]
◆出典:安乐窝
◆意味:酒を飲むのは良いが泥酔してはならない。この言葉に続いて「赏花慎勿至离披」とあります。これは、花を愛でるには花が完全に開ききる前にみるべきだ、との意。
つまり、物事は絶頂の後には衰退が待っている。絶頂の手前でやめるのがよい、との教えである。行く春を惜しんで詠んだ詩の一節です。
酒入舌出 / 酒入れば舌出づ
◆中国語:酒入舌出 [ jiǔ rù shé chū ]
◆出典:韩诗外传
◆意味:原文は「酒入者舌出,舌出者弃身」。酒を飲むと人はおしゃべりになる。おしゃべりが過ぎると失言が伴い身を滅ぼすことになる。
欲生于无度 / 欲は度無きに生ず
◆中国語:欲生于无度 [ yù shēng yú wú dù ]
◆出典:戦国(尉缭子·治本)
◆意味:欲望は規制のないことから生ずる。この言葉に続いて、「邪生于无禁」とあります。これは邪心は規則がないことから生じる、との意。