【楽しみは極むべからず】と中国のことわざ 企業で権力を集中することの功罪

民間企業においてトップに権力が集中したことで、弊害や問題が起きて紛糾しているとい話題が喧(かまびす)しい。

日本でもそうなんだから、ましてや中国においてはなおさらのこと。企業に限らずどのような組織体であっても、トップには誰も文句は言わない。よって、時には内部でもめ事などの事件が世間を賑わすことに。どうしたものでしょうか…

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見て見ぬふり

縦社会が特徴の中国社会。会社でいえば総経理(社長)に阿(おもね)る社員がいても、文句を言う社員はいない。

総経理が出入り業者からリベートを要求したり、会社の金を私的に流用したりと、やりたい放題のことをしていても、そのことを咎める部下はなかなかいません。大方は陰でこそこそと言い合うかあるいは中国ことわざにある「視ても見ず」というのがせいぜいのところ。

日系企業にはコンプライアンスの一環として「内部通報制度」が設けられるようになりました。しかし、中国現地の日系企業に勤務する中国人社員にとっては、日本本社に「通報」すること結構敷居が高いと思われます。

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中国では定着している挙報

他方、社内の部門責任者の不適切な行為に対する密告のような手紙やメールは時々総経理のもとに届きます。日本本社に通報するのではないので、結構気軽に情報を寄せてきます。中国には以前から「举报  」という政府機関に通報する制度があり、密告に抵抗はないようです。

私も在任中に何度かその種の密告を受けとったことがありました。しかしあとからの報復を恐れてか、そのほとんどは匿名のため真実か否かを断定するのは実際には難しい。自分の上司を引きずり落そうと画策しているのかもしれませんし…

もし、その種の手紙などを受け取ったら十分な調査が必要です。それも内々の調査。

 

何でもできる総経理

悪行三昧を続ける総経理の下では社員達の士気が上がる訳はなく、業績もじり貧。疑問を感じた本社は監査と称して現地に入り、ようやく実態を知ることになります。その結果、総経理は更迭され帰国の憂き目にあい一巻の終わり。勝者のいない悲劇の結末です。

 

中国では社長に相当するのが総経理。「総」がついているだけあって会社のすべての権力を集中して握っています。であるからこそ即断即決ができるというものです。日本人にはとても真似はできません。しかしながら、それとは裏腹に総経理が思った通りに好きなようにできるわけですから、総経理のタガが一つ外れると暴走が始まってしまいます。

権力が集中している、それに文句を言う部下はいない、そういう構造の中にあっては総経理自身の自己規制がどうしても必要です。

 

楽しみは極むべからず

総経理と言っても所詮は一人の人間ですから、楽しい人生を送りたいと思うのは自然なことです。日本では平凡な社員であったとしても、中国へ総経理として派遣されてからは今まで考えられなかった「楽しいこと」も満喫しようとすればできる立場です。しかしそこには自己規制なんてものは働きません。であるからこそ「楽しみは極むべからず」とい中国の格言を肝に銘じるべきです。その格言は「欲をかくのもほどほどに」とも言っています。

それができるか否かが総経理としての品格ではないでしょうか。何としても自己規制をしなければ自身はおろか家族、社員など周囲のすべてが不幸になってしまいます。

勤しむべきは佚道

そもそも会社経営者として考えるべきことは社員達のことです。孟子は「佚道(いつどう)を以て民を使えば、労すと雖も怨まず」という格言を残しています。社員がより楽な生活ができるようにとの思いで対すれば、社員達は苦労しても怨むことはないとの格言です。

つまり、会社は総経理(社長)だけのものではなく社員のものでもあると考えることができます。

そう考えると、権力を集中していているからと言って、何でも好きなようにするのではなく、ほどほどにするのがよいと言えるのではないでしょうか。

会社のトップをコントロールできるのはトップ自身のみだということです。それを実現するために総経理たるもの常に自分を磨き高める努力と高い倫理観が求められます。内部通報制度のお世話になることのないように…

「中国ビジネス成功の決め手 現場目線で急所を解説」の目次はこちら

 

成功のヒント 中国のことわざ・格言

视而不见 / 視る、而して見ず

◆中国語:视而不见   [ shì ér bù jiàn ]

◆出典:礼记(大学)

◆意味:不注意であること。転じて、見て見ぬふりをする。無関心を装う

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欲不可纵、乐不可极 / 欲は従にすべからず、楽しみは極むべからず

◆中国語:欲不可纵、乐不可极   [ yù bù kě zòng、lè bù kě jí ]

◆日本語表記:欲不可従、楽不可極

◆出典:礼記(曲礼上)

◆原文:傲不可长,欲不可从,志不可满,乐不可极

◆読下し:傲りは長(ちょう)ずべからず、欲は從(ほしいまま)にすべからず、志は満(み)たしむべからず、楽しみは極(きわ)むべからず

◆意味:自分の欲だけを満たそうとしてはならない。楽しむことは良いが極めずにほどほどにした方がよい。儲けすぎると必ず反動が来る。儲けすぎはむしろピンチである。

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以佚道使民、虽劳不怨 / 佚道(いつどう)を以て民を使えば、労すと雖も怨まず

◆中国語:以佚道使民,虽劳不怨   [ yǐ yì dào shǐ mín, suī láo bù yuan ]

◆出典:孟子(尽心上)

◆意味:人々がより安楽な生活を送れるようにと人々を使えば、人民は苦労をしても怨むことはない。

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