行きは良い良い帰りは恐い 心してかかれよ 中国とのビジネスには…

笑顔で握手を交わし乾杯! 将来の発展を思い描きつつ、日中双方がタッグを組んで事業を開始したにも関わらず、途中で頓挫するケースの多いこと。中でも事業が軌道に乗る前の段階で、突如として中国側から手を引く、との通告があった場合はもうたいへんです。日本側は驚き慌て自失状態に陥ることになります。あの時の笑顔は何だったのか、と憤慨しても始まらない…

ブームのシェア自転車

一昔前までの中国では、朝の出勤時間にはまるで洪水のような自転車が溢れていました。それが高度成長期の中盤くらいになるとマイカー通勤で大渋滞の毎日。その後、環境汚染の問題もあってか、シェア自転車が2015年ころから爆発的に増えました。

中国でシェア自転車の原型ができたのは2014年のこと。それが瞬く間に中国全土に拡大し、ようやくエコの概念が一般市民に定着してきたのかと、私には思えました。

 

そして中国のシェア自転車の大手が日本にも進出し、和歌山市や大津市でシェア自転車事業の展開を始めたのが2018年の春。しかし、わずか半年で撤退することになったそうです。提携していた日本の自治体側は困惑することしきり。

なぜ、そんな短期間にしかも突然に撤退することになるのか…

 

三十六計 逃げるに如かず

実は中国ではこういった突然の出来事はけっこうたくさんあります。小さいのでは私が一時帰国で一週間留守にしていた間に、よく行ってたラーメン店が他のお店に変わっていたりしたことも。

 

中国で受け継がれているはかりごとや駆け引きをまとめた「兵法三十六計」があり、その中にあるのが「走(に)ぐるを上計と為す」と。勝ち目がないと見た時には直ちに退却せよと古くから言われているのです。

 

シェア自転車の突然の撤退は背景に何があったのか、また中国側でささやかれている経営上の原因なのか私にはわかりません。がいずれにしても日本で事業を継続するメリットが感じられなくなったのでしょう。

 

中国では、勝算がない時には戦いを回避するのが鉄則。一旦は勝算ありとみて始めた事業が、やってみたらそうでもないことがわかったら、さっさと引き上げるということです。

日本人が好む(?)当たって砕けろという玉砕戦法は「匹夫の勇」として軽蔑されます。

中国での変わり身の早さには、昔からの兵法が厳然として生きていることが、背景にあるのではないかと私は思います。

行きは良い良い帰りは恐い

中国側が撤退するのは速いのですが、中国に進出した日本企業が中国から撤退するのはたいへんな労力を伴うことになります。

 

あるとき大連に進出した日系企業の経営者から、ため息交じりに苦労話を聞かされたことがありました。日本での店舗経営のノウハウをもって意気揚々と事業を開始したが、業績が思うように伸びずやむなく撤退をすることになったその企業。

撤退の事務手続きが非常に煩雑で、なお且つ日本から持ち込んだ機材が持ち出せないなど、既に何カ月も経過しているとぼやいていました。進出した時とは手の平を返したような対応に振り回されているようでした。

中国では「山に登るのは簡単、下るのが難しい」と言われます。行きは良い良い帰りは恐いとはこのことか、と。

 

立つ鳥跡を濁さず は日本らしさ

しかし、いくら撤退手続きが煩雑であるからと言って、夜逃げ同然で撤退するのはルール違反でありいただけません。

中国と外資が合弁した企業で、ある朝、従業員が出勤したら外国籍の経営幹部は全員姿をくらましていたという話を何度か聞きました。可哀そうなのは事情が全く分からず、放置された中国人社員です。

 

しかし、日本企業にはそういう事例は聞きませんでした。善始善终(初めから終わりまで最善を尽くす)とは中国のことわざ。これができるのが日本人です。どんなに面倒でも最後まできちんとしようとします。そのことは中国人もよくわかっているようです。

 

何が何でも成功するぞという意気込みで用意周到にして中国に進出するのですが、必ずしもうまく行くとは限りません。日本人はそれでも頑張って踏ん張ろうとするのですが、中国では、ダメと判断したら速やかに逃げるのが得策。

思い通りでない経営状態の場合は勇気をもって速やかな経営判断を行い、撤退を決めたら最後まできちんと処理をすることが、次のチャンスが来た時まで信頼を持ち続ける要点ではないでしょうか。

☛「中国ビジネス成功の決め手 現場目線で急所を解説」の目次はこちら

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中国ビジネスの成功を勝ち取る ことわざ・格言

上山容易下山难 / 行きは良い良い帰りは恐い

◆中国語:上山容易下山难   [ shàng shān róng yì xià shān nán ]

◆巷間言われている言葉

◆意味:山に登るのは体力を費やすが、危険なことはあまり発生しない。しかし、下山するときに道に迷ったりして難しい。山に登るは容易なれど下るは難し。行きは無事でも、帰りには何事か起こるかもしれない、との意。

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惊慌失措 / 慌てふためく

◆中国語:惊慌失措   [ jīng huāng shī cuò ]

◆出典:北齐书·元晖业传

◆意味:驚いて慌てふためくこと。周章狼狽する。惊慌とは驚き慌てるさま。失措とは自失すること。

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走为上计 / 走(に)ぐるを上計と為す

◆中国語:走为上计   [ zǒu wèi shàng jì ]

◆日本語表記:走為上計

◆出典:南齐书(王敬则传)

◆意味:逃げるべきときには逃げるのが上策である。面倒なことが起きたら深入りせずに逃げるのが得策である、との意。臆病や卑怯で逃げるのではなく、勝ち目のない時には後日の再起のために勇気ある撤退が必要であるとの教え。

◆兵法三十六策の内のひとつ。「三十六計逃げるに如かず」ともいう。

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匹夫之勇 / 匹夫の勇

◆中国語:匹夫之勇   [ pǐ fū zhī yǒng ]

◆出典:孟子(梁惠王下)

◆意味:思慮が浅く、只血気にはやってがむしゃらに行動したがるだけの勇気のこと。小人物の勇。

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善始善终 / 立つ鳥跡を濁さず

◆中国語:善始善终   [ shàn shǐ shàn zhōng ]

◆出典:庄子(大宗师)

◆意味:初めから終わりまで最善を尽くす。真面目に処理をすることの例え。

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