名選手名監督ならず 球界だけでなく中国現地会社にもあるぞ

こんなことも知らないのかっ! こんなこともできないのかっ! と声高に言い放つ新進気鋭の日本人管理者。

誰もが認める実績を日本で上げ、選ばれて、そして大きな期待を受けて本社から中国現地に送り込まれた、はず。しかし、彼は頑張れば頑張るほど深みに。失敗のシナリオのとおりに彼は破綻に向かって歩みを運んでいる。悲劇の原因はいったいどこに…。

名選手、必ずしも名監督ならず

彼は優秀な社員ではあったが、残念なことに、部下社員や顧客と相対する現場でのマネジメント経験がなかった。言わば優秀なプレーヤーが、突然、中国現地会社の総経理(社長)という、高級管理職に就いたということです。

 

自分では簡単にできたことであっても、必ずしも他の人もできるとは限らない。また、習慣や制度などが大きく異なる環境の中では、例えマネジメント経験があっても簡単ではないのに、管理職の素人がいきなりでは無理があるというもの。

 

そういえば、プロ野球人気二球団の監督が一度の優勝することなくついに辞任を余儀なくされたという。二人の共通点のひとつが、現役時代はスター選手であったが、コーチ経験がないまま、いきなり監督になったこと。

極めて残念ですが、日系現地法人に派遣される日本人社員の世界でも、似たようなことがあり、身につまされます。

 

高能力者が陥る落とし穴

プレーヤーとしては一流の人や高い能力を持つ人が、間々犯しがちな誤りが、部下も自分と同じであると誤解すること。つい、上からの目線で「何で…」と言ってしまう。このことがどれだけ一般に社員に心に傷をつける事か。

挙句の果てに、うまくことが運ばない責任を部下のせいにする。これでは周囲の理解や部下からの指示が得られるはずがありません。

 

チームの監督や中国の現地会社の総経理(社長)というトップに上り詰めた人は、部下と目線の高さを揃えて指導マネジメントしなければなりません。一般社員にとっては雲の上まで登ることなどできようもないのですから。

トップに就いた人に必要なのは「卑譲(ひじょう)の心」であろう。日本では「実るほど頭を垂れる稲穂かな」ということわざがあるが、相手を立て、自分は一歩後ろに退る、という「卑譲」の姿勢、謙虚さがトップに求められます。

経験に勝るものはない

日本とは大きく異なるビジネス環境の中で業績を伸ばすには、中国での経営経験が何より必要であろうと思います。

韓非子は豊富な経験がいかに大事か、「老馬の智」と言う言葉で例えています。

しかし、初めて中国に赴任する人にとっては、「老馬の智」はあろうはずがなく、現実には中国赴任後、肌で学習する以外にありません。

それは已むを得ませんが、問題はマネジメント経験の有無です。もし、日本でマネジメント経験がないと、大きなハンディになり得るということです。

現地に来てからマネジメントを勉強すればいいじゃないか、といっても短時間で結果を出さなければならない立場にある総経理。たった数年の任期には間に合いかねます。

 

 

付和雷同ばかりでは

マネジメント経験ともう一つ大事なことは総経理を取り巻く経営幹部を、自分の好みでイエスマンばかりを集めてしまうことです。

部下の話に聞く耳を持たない独裁経営者や、聞いたとしても「イエス」しか答えようとしない幹部では、よりよい戦略の組み立てや会社の運営には心もたない限りです。

会社を一段大きくしたいのであれば、経営スタッフの中に総経理に対して敢えて「物言う幹部」を是非加えるべきであると強く思います。

 

私は中国人社員のうち4人を経営幹部に任命しましたが、その中の一人は、敢えて物言う幹部を含めました。時には総経理である私に反対意見を出し、議論をする場面も。しかし結果的には、日本人には気がつかないことを教えられたり、自分の出した戦略案に対する修正をすることで、施策は成功に結び付いたりと、ずいぶん経営には貢献してくれました。

付和雷同の人ばかりでは会社業績の結果はたかが知れたものにしかならないであろうと思います。

 

名脇役を持て

物言う幹部は実は総経理自身の右腕であり、名脇役として極めて重要な存在であるはずです。総経理は意識して、そんなバイプレーヤーを見い出し、育成しなければなりません。そのことが事業拡大の鍵を握っているといっても過言ではないのです。

側面的に言えば、総経理としての謙虚さであり、徳でもあるということです。書経には、うぬぼれると、せっかくの立派な行いをも台無しにしてしまう、との格言が記されています。

優秀な人が陥りがちな罠から遠ざけてくれるのが、物言う幹部の存在。そして彼は総経理に緊張感を与え、そしてきっともう一段高みに押し上げてくれるに違いがありません。

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中国ビジネスの成功を勝ち取る ことわざ・格言

卑让德之基也 / 卑譲は徳の基なり

◆中国語:卑让德之基也   [ bēi ràng dé zhī jī yě ]

◆出典:左傳

◆意味:卑は自分を低いところにいて相手を立てること。譲はゆずること。卑譲はりっぱん人格を作る基本になっている。卑譲とは謙虚ともいえる。実るほど首を垂れる稲穂かな、との日本のことわざがあるように、リーダーには不可欠である。

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老马之智 / 老馬の智

◆中国語:老马之智   [Lǎo mǎ zhī zhì ]

◆出典:韓非子(说林上)

◆意味:(年老いた馬はとても利口で、道もよく知っているので迷うことがないことから)経験の豊富な者は判断を誤らないことの例え。

◆故事:斉の管仲が道に迷ったときに「老馬の智は役に立つ」と言い、老馬の後についていくと、行くべき道が見つかったという。

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毋剿说,毋雷同 / 付和雷同

◆中国語:毋剿说,毋雷同   [ wú chāo shuō, wú léi tóng ]

◆出典:礼记(曲礼上)

◆意味:剿说とは他人の説を自分の説とすること。雷同とはむやみに同調すること。付和雷同してはならない、との意。

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有其善,丧厥善 / その善を有りとせば、その善を喪う

◆中国語:有其善,丧厥善   [ yǒu qí shàn, sàng jué shàn ]

◆出典:書経

◆原文:有其善,丧厥善;矜其能,丧厥功

◆意味:自分は善いことをしていると、うぬぼれたりすると、せっかくの善行が台無しになってしまう。私は能力が高いと人を見下したりすると、せっかくの功績が帳消しになってします。経営の責任者たる総経理はふんぞり返るような態度では成功しない。

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