トイレで閃いたアイデア 実はその後が難事… 創業守成とは

大連では毎年、旧正月ではなく日本のお正月明けに「新年賀詞交歓会」なる催しを実施しています。現地に進出している日系企業に駐在員として仕事をしている方々を中心にした会合です。新年のあいさつを交わしながら、今年一年の事業発展をお互いが祈念する、言ってみれば新春パーティ。記憶では2004年のお正月がその始まり。実は、この賀詞交歓会は…

 

アイデアは“三上”で生まれる…

実はこの催しは、大連の日本商工会市内分会が主催する行事。そして発案者は何を隠そうこの私。

2000年に大連に赴任し、3年目となる2003年に商工会市内分会長の役を仰せつかりました。ある大事な顧客の総経理から「まあ、順番みたいなものだから…」と言われたのです。引き受けたものの結構大変。前任者から引き継いだ会員向けのセミナーを何回か開催したのですが、参加者の数も顔ぶれも限定的で、マンネリ感が漂っていました。

 

多くの方に参加していただけそうなイベントなどは無いものだろうか? あれこれと思い悩んでいたある時、パッとひらめいたのが賀詞交換会の開催でした。

馬の背の上、枕の上、トイレに座っているときにアイデアは生まれるという“三上”を唱えた中国の文学家がいました。私が閃いたのはどのようなシチュエーションであったのか、覚えていませんが、その古来の説はわかるような気がしますよね。

蓴羹鱸膾に故郷(日本)を思い出す

日本のお正月である元旦は中国では単なる祝日。街にはお正月の雰囲気はまったくありません。大晦日には自室のテレビで紅白を見ることくらいで、おせち料理や雑煮なんて中国にいる限りでは縁がありません。

 

故郷の料理である蓴菜の吸い物と鱸のなますのなつかしさのあまり、官職を辞して帰郷した“蓴羹鱸膾(じゅん こう ろ かい)”の故事が中国にありますが、その気持ちは日本人であっても同じ。

お雑煮も味わえない駐在員が一堂に会し、松の内に暫しお正月気分を、との思いでした。

友人のホテル総経理に協力をいただき、宴会場を貸し切り、舞台上には新春を寿ぐバックタイトル、さらに鏡開きまで準備していただきました。

おかげで、賀詞交歓会は大成功。自分のアイデアがこんな大当たりすると、なんとも気持ちがいいこと!

 

今も続く賀詞交歓会

賀詞交換会はその後も毎年1月に開催され、私が大連を離れるころには日本人コミュニティに根付き、恒例行事となっていました。尤も、私が発案し初めて開催ことを知っている人は誰もいなくなってしまいました。残念!

大成功となった新年賀詞交歓会は今も続いていて、その時期になると密かに悦に入っています。

 

この歴史の長い中国でわずか10数年では伝統とは言えませんが、会社経営であれ何であれ、“続く”ということは、なかなかの価値あることではないでしょうか。

創業は易く守成は難し

創業は易く守成は難し、とは貞観政要にある一節。

唐の太宗が側近に「帝王の業は創業と守成と、どちらが難しいか」と尋ねたところ、房玄齢は「敵を破り降伏させ、戦に勝たねばなりません。ですから創業の方が難しいと思います。」と。一方、魏徴は「新しいことに人民は期待をするので創業は難しいものではないが、その後は、当初の志から外れてしまい人民は弱り衰え、国は衰退することが多い。よって守成の方が難しい。」と。

太宗はそれらに対し、「創業の難事は過去のこと。今は守成の難事にあたろう」と答えたという故事があります。

「守成」とは、受け継ぎ守ることだけではなく、受け継ぎ拡大するところに価値があると思います。そのためには、創業者や前任者以上に情熱を傾け果敢に挑戦を重ねることが必要です。実はそれこそが「難事」ではないでしょうか。

 

総経理のリーダーシップに社員や仲間の協力と顧客の理解が加われば、実現できると考えます。その基礎には「自他共の精神」がなければなりません。

 

中国の街中には小さな飲食店や小売店が無数にありますが、よく見ると、新しく開店しているかと思えば、一方では閉店し、そのサイクルが日本に比べるととても短く感じます。

中国では事業の規模を問わず続けることは、そう簡単ではないことが容易にわかります。

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中国ビジネスの成功を勝ち取る ことわざ・格言

三上

◆中国語:三上   [ sān shàng ]

◆出典:欧阳修(宋代の文学家の散文・欧阳文忠公文集)

◆原文:我平生所作的文章,多是在“三上”,就是马背上、枕头上、厕座上。大概只是因为只有这些地方才可以集中思想吧。

◆意味:「私は文章を考えるときは三つの上が多い。すなわち、馬の背の上、枕の上、トイレに座っているときに、集中して思索できる。」と。ひらめきは、三つの上で、言わばリラックスしているときに生まれるのかもしれません。アイデアは机の上では思いつかないことが多いというもの。

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莼羹鲈脍 / 蓴羹鱸膾(じゅん こう ろ かい)

◆中国語:莼羹鲈脍   [ chún gēng lú kuài ]

◆出典:晋书·张翰传

◆意味:莼羹とはじゅんさいの吸い物。鲈脍とは鱸のなます。故郷の味の意。故郷に帰りたいとの思いを現わす熟語。

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创业守成 / 創業は易く守成は難し

◆中国語:创业守成   [ chuàng yè shǒu chéng ]

◆出典:貞観政要(唐代に呉兢が編纂した太宗の政治に関する言行録)

◆意味:「創業」とは事業を始める事、或は国の基礎を固める事。「守成」とは堅実に守っていくこと。「創業は易く守成は難し」とは、事業を始めることに比べると、出来上がった事業を受け継いで守っていく事の方が格段に難しいとの意。今の時代は、“创业难,守业更难”(日本語表記:”創業難、守業更難”。創業も難しいが、事業を続けるのは」さらに難しい)ということになるのかもしれませんね。

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