中国の会社でパワーハラスメントよりもっと悪いものが…

会議中にチョークや灰皿が飛んできて、それをうまく避けたとか、成績が悪くて「給料泥棒!」と呼ばれた、など、私が若かったころの日本の会社には今でいうパワハラが珍しくありませんでした。〇〇部長が来たらデスクが凹む(ご機嫌が悪いと机の横に来て足で蹴とばすので、机が凹む、との意)といった武勇伝めいたものまで色々。

企業内部でも残念ながらなかなか無くならないこのパワハラ。中国では「职权暴力  (日本語表記:職権暴力)」というそうですが…。

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没有问题,没有办法

中国現地の我が社で個人目標の数値を決める営業会議。経験からは「〇件やります。」と答えた営業員に対し、目論見より低かったら「もう少し多くしろよ。」と言い、彼が「わかりました。そうします。」と言って目標数値は決定。そんな感じをイメージしていました。

 

ところが、そういうことに不慣れなせいか、なかなか言おうとしないのです。

どうも、自分の口から目標を宣言して、もし達成できなかった時に叱責されはしないかと心配が先に立つようです。社員にしてみれば、そのことが原因で会社との労働契約を解除されたら路頭に迷うことになりかねません。もちろん、こちらにはそんなつもりは全くないのですが。

 

そんな彼らに、業を煮やして、達成できなくても怒らないから言ってみろと、少し声を荒げたことがありました。

しかし、結局、彼らは自分の目標を宣言することはしませんでした。大声で圧力をかけても何の意味もないことなのです。

 

押し黙る営業員を前にして我慢しきれず、会社全体の販売予算から人数割りをして、「これだけはやれ!」と結局下達することになってしまいました。

権力を持った人と一般人民の関係と同じく、総経理に社員が盾突くことはありません。しかし、だからと言って、同意したわけでもありません。それは自分の身を守ることでもあるのです。

社内で総経理が下達した場合、表面的には「没问题  (わかりました)」と社員はその場をしのぎ、会議が終わったら「そんなのできるわけねぇだろが!」と舌を出す、これこそ「面従後言」という古来のことわざにあるとおり。

そして、達成できなかった場合、「没办法  (仕方なかった)」とその原因を他のせいにするのが常です。論語には「怨天尤人」と、まず自ら反省しさらに精進せよと書いてあるのですが…。

 

ある時は、成績の良くない社員に対して、皆の前で叱責をしたことがあります。それは、本人はもちろんですが、周囲の社員に対しても同時に奮起を促す目的でした。

しかし、個人主義の中国では、何の効果もありませんでした。つまり、周囲にいる社員にとっては、しかられているのは彼で、自分には関係ないこと、という認識です。

うまく行かない原因はどこに?

むしろ、メンツをつぶされたことの方が彼らにとっては重大問題で、つぶされた相手である総経理(社長)に対する怨念だけが残ってしまうことになります。

最悪の場合は、総スカンをくらったり山猫ストに繋がったりと、ろくなことにはならないのです。実際に、ストライキ寸前までになった、総経理辞任要求が出された、などの事例があったように聞いています。

 

日本人総経理(社長)対現地社員という対立構図に発展してしまうと、かなり厄介です。社員が「職権暴力だ」と労働仲裁機関に訴え出たら、その対応に四苦八苦し、本業の発展どころの話ではなくなってしまいます。

 

総経理として、指導の一環として、奮起することをきたして圧力をかけたと考えるのでしょうが、自分が力んでいるだけで、白けた社員には無力でしかありません。こういうパワハラめいた稚拙なやり方では、今の時代の中国で業績が伸びることには繋がりません。

 

俺は俺で一生懸命やっているんだと総経理は思うでしょうが、何の結果も出ない。「行いて得ざるものあらば、みな反りてこれを己に求む」とは孟子の言葉。結局は自分に原因があるとの教えです。そう考えれば、改善対策も見えてくるはず。

 

理解させ納得させ共感を得る

朝から社内に怒号が飛び交うことが珍しくない職場で(日本の話です)、私は育ちました。いわばパワハラ世代。ある時、ふと感じたことがあります。同じビルに入居している一流企業の前を通り私は出勤するのですが、わが社のような怒号は一度も聞いたことがありません。それでも立派な業績を残すことができるのは何故?

 

上からの圧力による強制から社員の自主能動的な取り組みによってのみいい仕事ができる。ひいては業績を伸ばすことになる。

大声で暴言や脅しで押さえつけるような稚拙はやり方ではなく、リーダーとして部下社員に理解させ、納得するまで話し込み、共感を得る。

それは、始めは相当の時間がかかりますが、一旦その思考が社内に出来上がると後は勝手に動いていきます。

 

パワハラよりも悪いのは…

日本本社から派遣されて現地で総経理(社長)を張っている人は、いずれ二、三年もすれば日本に帰ることになる。その時のために大事なのは失点しないこと。

そう考える総経理として、何にも挑戦をしないで無風の社内を作り出し、それで社員が元気いっぱいに仕事するわけがありません。焦点のボケた会社になり下がってしまう。

パワハラでは業績は上がらないが、ある意味、総経理は一所懸命にやったとも言えます。一方、自身の保身だけを考えた総経理の不作為の罪はパワハラするよりも重い。これ、駐在員が犯しがちな過ちです。

 

徳は本なり

考えてみれば総経理(社長)とはいえ、一介の課長レベルの社員が突然海外子会社の社長に任命され遣って来ただけのことです。決して日本時代から急に偉くなったわけではないのです。誤解をしてしまったのであれば早く気がつかなければなりません。

 

ハラスメントと部下に感じさせるような上からの物言いをやめて、部下社員の尊厳を大切にし、信頼するところに中国ビジネスを成功に導くツボがあると考えます。

そう考えると、自分が背負った中国ビジネスの成功は自身にかかっているといえます。

中国古来の格言には「徳は本なり、財は末なり」と。結局、会社発展の要点は代表者たる総経理の徳にある。そのために、日々、自分を磨き精進することが求められます。

☛「中国ビジネス成功の決め手 現場目線で急所を解説」の目次はこちら

 

中国ビジネスの成功を勝ち取る ことわざ・格言

面从后言 / 面従後言

◆中国語:面从后言   [ miàn cóng hòu yán ]

◆出典:書経(尚书)益稷

◆意味:人前では服従しているように見えても、陰ではあれこれと非難すること。面従腹背。

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行有不得反求诸己 / 行いて得ざるものあらば、みな反(かえ)りてこれを己に求む

◆中国語:行有不得反求诸己   [ xíng yǒu bù dé fǎn qiú zhū jǐ ]

◆日本語表記:行有不得反求諸己

◆出典:孟子(离娄上)

◆意味:物事がうまくいかなかったり、挫折や困難に遭遇した時は、その原因が自分にあると反省するのがよいとの意。

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怨天尤人 / 天を怨みず、人を尤(とが)めず

◆中国語:怨天尤人   [ yuàn tiān yóu rén ]

◆出典:論語(憲問)

◆意味:自分が思っているようにいかないからと言って、天を恨んだり人をとがめたりせず、自らを反省し、修養に励め、との意。

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德者本位、财者末也 / 徳は本なり、財は末なり

◆中国語:德者本位、财者末也   [ dé zhě běn wèi, cái zhě mò yě ]

◆出典:大学

◆意味:徳を備えることが人としての根本であり、財を成すことは末端のことに過ぎない。

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