天からの美禄には功罪があるという 中国ビジネスの成功のためにどうすれば…

 

ある頼みごとをお願いしていた中国人の友人から突然の連絡。今夜、食事をするから君も来ないかとのこと。中国では、事前に予定を組んだりすることもなく、人の都合も考えず、突然、今から…というのが普通。とにかく指定されたレストランに急いだのです…。

 

 

中国ビジネスで問題解決の際の強力なファクター

実は、大口の顧客の未回収金が相当額になり、困った事がありました。担当の社員に状況を聞いても、相手が大きすぎて督促できないのだと埒があきません。しかし、わが社としても大事な売り上げ、回収できないと大変な問題です。止むを得ず、訴訟を考えました。

 

そんなあるとき、懇意にしていた地元の若手実業家と面談する機会があり、そのことを相談しました。彼はそんなことで訴訟するより、俺に任せろ、ということになったのです。

 

何日か経過し、突然の呼び出しとなった次第。

会食のレストランの個室に入ると、何と、問題の未収金顧客のトップがそこにいたのです。聞くと友人の彼はその顧客の得意先でもあったのです。彼はその場で、何故、代金を払ってやらないのか、と。すると、その顧客はその場で財務担当者に電話をかけ、すぐに支払うように、と私の目の前で指示を出しました。

人脈の力に感嘆しつつ、大きな問題が解決しました。

 

そして、その後会食に移りお酒を酌み交わすことになりました。問題が問題であったために、少々気まずいその場の雰囲気は、お酒によってたちまち和みました。「酒は天の美禄」と古来から言われている言葉ですが、まるで魔法のようなその効用を経験すると、その意味が納得ができます。

 

交渉事を進める場面にも

大連で一層の事業拡大のために、新たな分野への進出を目論みました。しかしながら、それは、営業許可証には明記されていない分野だったのです。ならば、変更の手続きをすればよいようなものですが、それが簡単ではないのが中国。

玉でできた杯。まさに玉杯。

正面から変更申請をしても認めるはずはありません。なぜなら、その分野は既に我が社の競合社の政府系企業が先発業者として独占的に展開していたからです。

 

そこで思案をして、人を介して許認可権を持っている部局の担当者と会食することにしました。そして、当日、その方を交えて乾杯をしながら状況を説明。

結果は、現状の営業許可範囲を拡大解釈することで、新分野への進出は黙認することにする、という誠に微妙ではありましたが、了解を取り付けることができました。

 

応接室で面と向かって“しゃっちょこばった”話し合いではおそらく解決はしなかったでしょうが、酒という天の美禄を以て奏功したのだと思います。

 

常に美禄にはあらず

瀋陽市に支店を設けた時のこと。支店の設立登記が終わっているのに、なかなか事業の開始ができずに膠着していました。彼らが牛耳っている業界の中に私の会社が入り込むことになり、彼らが持つ既得権益が犯されることを懸念したのであろうと思われます。

そこで北京から業界関係のトップに来てもらい、関係者で会食をセット。そこまで来たら、これで障壁は取り払われきっとうまくいくはず…。

 

と、思いきや、席上で瀋陽の関係者から窮状が訴えられ、和他者に対して、そう急ぐこともないだろうと、逆に説得されてしまい、画策は見事に失敗。苦い酒になってしまったのです。この時は相手方が「酒は天の美禄」であることを享受したことでありましょう。

 

こういった折衝事は相手方、仲介者の力関係が大きく影響しますが、この時には、おそらくは仲介役の方が十分事情が分からないままに引き受けたのではないでしょうか。いわゆる「軽諾寡信」とことわざに言われています。

 

 

酒は猶兵の如し

仕事の場合であってもそうでなくても、酒は主体ではなく、相手との距離を縮め、ある時は潤滑油となり、成功へと導く存在であると思います。中国古典の詩経には「酒を飲み温克す」とあります。自制心を以て酒を飲むから乱れない、との格言です。交渉事など、話を進めるうえで酒の効用は認めざるを得ません。

しかし、南史のことわざでは、「酒は猶兵の如し」と酒も武器と同じだと言われています。つまり、飲み方を間違うと我が身を損なうことになり得るというのが酒。重々気をつけたいものです。それにしても、仕事の宴席では酔っぱらっている中国人を見かけることはありません。きっと、もともと強いのでしょうね…。

☛「中国ビジネス成功の決め手 現場目線で急所を解説」はこちら。

 

中国ビジネスの成功を勝ち取る ことわざ・格言

 icon-pause 酒者,天之美禄 / 酒は天の美禄

◆中国語:酒者,天之美禄   [ jiǔ zhě, tiān zhī měi lù ]

◆出典:漢書(食貨志)

◆意味:酒は天から与えられたすばらしい贈り物との意。酒を称賛した言葉。酒の別名は天之美禄ともいう。

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 icon-pause 人之齐圣,饮酒温克 / 人の斉聖なる、酒を飲み温克(こく)す

◆中国語:人之齐圣,饮酒温克   [ rén zhī qí shèng, yǐnjiǔ wēn kè ]

◆出典:詩経(小雅·小宛)

◆意味:慎み深く智慧のある人は、自制心をもって酒を飲む。だから乱れない。

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 icon-pause 酒犹兵也 / 酒は猶兵の如し

◆中国語:酒犹兵也   [ jiǔ yóu bīng yě ]

◆日本語表記:酒猶兵也

◆出典:南史(陈暄传)

◆原文:酒犹兵也,兵可千日而不用,不可一日而不备,酒可千日而不饮,不可一饮而不醉。(酒は猶兵の如し、武器は千日使わなくても、一日たりとも備えのない日があってはならない。酒は千日飲まなくてもよいが一度飲んで酔わないことはない。)

◆意味:ここでいう「兵」は武器のこと。酒も武器と同じ。飲み方を間違えると我が身を損なうことになり得る。

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 icon-pause 轻诺必寡信 / 軽諾は必ず信 寡(少なし)

◆中国語:轻诺必寡信   [ qīng nuò bì guǎ xìn ]

◆出典:老子(第六十三章)

◆意味:安請け合いは信用を無くす元である、との意。良く事情を理解せずに、「何とかしましょう。」と希望を持たせてしまうことをつい言ってしまう。結果、自分が難儀し、相手の不信まで買ってしまうことになりかねないという戒めの言葉。

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☛「現場目線で読み解く 中国のことわざ・格言」はこちら。

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