蟷螂の斧で勝てるのか? 価値観の異なる敵地に乗り込んではみたが…

 

中国の東北地方の一地域が我が社のテリトリー。そこには官権を背景とした競合社があって、私が着任した時の同社のシェアは97%。対する我が社はわずか3%。まるで像と蟻。

それもそのはず、彼らは自分たちが地歩を築いてから外資の導入を行うので、我々がスタートするときには既に大きなアドバンテージを持っているのです。

そんな完全アウエー状態の敵地に乗り込んでは見たものの、まるで螳螂(カマキリ)が斧を振り上げて大きな車に立ち向かうようなもの。

しかし、赴任して5~6年経過したころのこと。とある当社の大口ユーザーを訪ねたところ…

 

 

▮顧客が持っている成功のツボ

その競合社は地方政府の直営。背景にある絶対的な官権力に加えて、我が社よりも数段安い価格などによって圧倒していて、歯牙にもかけない強大さを誇っていました。

 

そんな中で、私が訪問した大口顧客は、競合社からの誘いにも乗らず、一貫して当社との取引を継続していました。両社とも同じ国有企業。普通であればその競合社を選ぶはずですが、某大口顧客は、外資系のしかも競合社よりも高い価格であった当社を選択したのです。

 

で、少し不思議に思い、ある日、大口顧客を訪問。当社を選択した率直な理由を尋ねてみました。すると、思いもしない答えが…

 

その理由をこう説明してくれました。曰く「あなたの会社は、必要な時にはすぐに駆けつけてくれる。」「あなたの会社の社員は、決して偉そうな態度をとらない。」と。

そんなことはサービス業を営む企業としては至極当たり前ではないのか。

私は、品質がいいなどといった回答を予測していたのですが、思いもよらないご意見に驚き私はキョトン。

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▮弓調馬服が基礎

中国古典に「弓調馬服」ということわざがあり、戦であっても、いざというときに備えて弓の調子を整え、馬が他人に服すようにさせるという、戦う前の準備が極めて大事であるとの教えがあります。

 

我が社は競合社に勝つために特に奇策をてらったわけではなく、むしろ品質の良いものを提供すれば自ずと顧客は増えるという基本的な考え方に立脚していました。仮に人脈を頼りに顧客の開拓をするにしても、基本に「高品質」がないと継続的取引には結び付きません。

 

企業はより品質の良いものを準備し、ユーザーオリエンテッドの企業体質をもって、エンドユーザーである消費者の選択を得るのですが、その基本的なところで我が社と競合社の差が出たのではないかと思います。

 

 

▮愚公山を移す

現代の中国人は「一発勝負」が比較的好きなようです。

我が社の営業員も、一つひとつ積み重ねていくよりも、投網をかけるが如く一気にボリュームが取れるやり方を好んでいました。しかしながら、普通のマーケットの中にそんなうまい話はあるわけがありませんよね。

基礎を固めたら、あとはコツコツと努力を積み重ねる。「愚公山を移す」とは、思いが強ければ山だって動かせるという、中国古来の物語。

現代中国人はそれが苦手なのかもしれません。そこに組織のリーダーたる経営者は着眼すべきではないでしょうか。如何に経済発展のスピードが速いと言っても基本は変わらないはずです。

 

「自分の商売の欠点とか、改善とかに気のつかぬ者は、大いに反省すべきであろう。されば、自分の商売に対して、絶えざる研究と、努力が必要である。」とは我が先師の言葉です。心に刻みたいと思います。

»「中国ビジネス成功のツボ」をご覧ください。☛こちら

 

▮中国ビジネスの成功を勝ち取る ことわざ・格言

螳螂之斧 / 螳螂(かまきり)の斧

◆中国語:螳螂之斧   [ tang láng zhī fǔ ]

◆出典:陳琳(为袁绍檄豫州)

◆原文:欲以螳螂之斧,御隆车之隧 (螳螂が斧を以て隆車に向かう)

隆車とは大きな車のこと。

◆意味:螳螂が前足を振りかぶって大きな車に挑みかかるさま。弱者が身の程も知らずに強者に敵対すること。

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弓调马服 / 弓を調し、馬を服せしむ

◆中国語:弓调马服   [ gōng diào mǎ fú ]

◆日本語表記:弓調馬服

◆出典:荀子·哀公

◆意味:弓を使う時にはまず弓の調子を整え、馬を使う時にはまず人に服従させること。何事にも基礎をしっかりとしたものにすることが一番大事である、との意。

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愚公移山 / 愚公山を移す

◆中国語:愚公移山   [ yú gōng yí shān ]

◆出典:列子(湯問)

◆意味:愚公は往来に不便な山を崩し平らにして道路を通すという計画を考えた。そして、自分はもとより、子々孫々、ずっとそれを続ければいつかは必ず山は崩せるとの硬い硬い決意があった。その正位に感じ入った山の神は力持の神に命じて山を動かし、不便は無くなった、という物語。怠ることなく続ければ、大事も必ず成功するというたとえ。

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»「現場目線で読み解く 中国のことわざ・格言」もご覧ください。☛こちら

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