中国で 一を聞いて十を知る とは…

 

 

日本であればどこの企業にもある「就業規則」。社員が守るべきルールがその中に書かれています。

中国でビジネスを展開している現地の日系企業にも「就業規則」があります。が、そこには社員としてやってはならないことが、1頁、2頁を割いて具体的にこと細かく列記されていて驚かされます。

例えば、会社の備品を勝手に持ち出してはならない、など当たり前のことがとにかく仔細に禁止事項が書かれているのです。そのわけとは…

 

▮中国人社員 「ふさわしくない」と言われても…

日本なら就業規則に書かれている禁止事項は、「〇〇会社の社員としてふさわしくない言動」、或は「会社の信用を著しく害するような行動」などを禁止すると、具体的個々の事項ではなく概念的なことを書いていることが多いようです。

 

ところが、中国ではそのような書き方ではなかなか社員に伝わらず、うまく運営ができません。例えば、ある社員が酒気を帯びて勤務に就いたとしましょう。

日本人総経理(社長)など管理者からはどう見ても、“社員としてふさわしくない”ということは明白、よって処分対象になります。

 

しかし、その社員はおそらく不同意。言い分はこうです。「就業規則には酒を飲んで勤務してはならないとは書かれてはいない。よってそれをもっての処分は不当である。」と。

 

▮社員個人対会社 勝つのはどっち…

社員が非を認めず、会社側を訴えて仮に調停などになった場合、

・社員としてふさわしいか、或はふさわしくないかはそれぞれ個人の判断基準が異なる。

・もし会社側が酒を飲んで勤務した場合は制裁処分に相当するという考えであれば、就業規則上明確にすべきである。

・明確にされていない以上はその社員に非を責めることはできない。

・よって、社員が勝ち、会社側が負け。

そんなことに恐らくはなってしまいます。

 

これに限らず、個人と会社が争った場合は、だいたいは個人が勝ちます。それは法により判断されるのではなく、強者(会社)が弱い者(個人)いじめをするのは可哀そうなど、法ではなく裁判官など判定者の主観によってしまうからではないでしょうか。

 

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▮漠然としたことに対する合わない認識

例えば、いわゆる「品格」とはどんなものか、「品格がある人」とはどのような人か。

こんな曖昧模糊としたことであっても、文化や歴史を共有している人の間では、明確ではなくても感覚的に共有できます。

しかし、中国でビジネスを展開する日系企業においては、日本と中国という文化や歴史が大きく異なる二つのスタンダードが同じ企業内に存在しています。そこで共通の認識を持つのは大変難しいことです。

 

論語には「心の欲する所に従えども矩を踰(こ)えず。」とありますが、どこまでが“矩を超えない”範囲なのか、現地社員のみんなが理解しているとは到底思えません。

現地人材の中でも優秀な社員にはそんな心配は無用ですが、一般の社員達には、“酒を飲んで勤務してはならない”ということに触れて、それを基準に考えると酒気帯び勤務以外にも、犯してはならないことがあると、考えつく人は少数派。

 

一を聞いて十を知る」という格言がありますが、実際には、よくて「一を聞いて二を知る」程度。現実は十を言えばやっと一、二が伝わるかな…。

…というような現実を知らされました。

 

 

▮「…」らしさ」という言葉は ほぼ意味がない

「○○らしく…」などというのは時間の無駄。

総経理(社長)が朝礼や会議などで、「社員の皆さんは○○社の社員らしい服装で通勤してください。」そんな風に言っても、「らしい服装」とはどんな服装かを、正しく理解されることは極めて難しいのです。ポロシャツやTシャツ、ジーンズで通勤する社員達にとっては想像もできないはずです。

 

もし、総経理が「一流企業の社員らしく、スーツ、ネクタイ姿」で通勤するのが、中国でビジネスを展開する企業の社員として「ふさわしい」と考え、社員にそう要求したいのであれば、具体的にそういうべきです。さらに、柄や色も含めて。

もっとも、そういう要求を出すと、それを聞いた社員からは「じゃあ、スーツを買うから、その手当を出してくれ!」と逆の要求が出されるかもしれませんよ…。

そんなことで、就業規則の社員禁止事項はだんだん増えていく事になりました…。

それはともかく、中国では「一を言って十を理解する」ことを期待はできません。意思を伝えるためには、言いたいことを繰り返し、具体的に語る以外になさそうです。

(それは日本でも同じことでしょうかね?)

 

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▮中国ビジネスの成功を勝ち取る ことわざ・格言を解説

从心所欲,不逾矩 / 心の欲する所に従えども矩を踰えず

◆中国語:从心所欲,不逾矩   [ cóng xīn suǒ yù, bù yú jǔ ]

◆日本語表記:従心所欲、不踰矩

◆出典:論語(為政)

◆意味:好き勝手に振舞っても、道徳や規律から外れることはしない、との意。「矩」は規則・おきて、「踰える」は超えるということ。

◆解説:孔子の論語の中の一節。“吾十有五而志于学,三十而立,四十而不惑,五十而知天命,六十而耳顺,七十而从心所欲,不逾矩。”「吾、十五にして学に志す。三十にして立つ。四十にして惑わず。五十にして天命を知る。六十にして耳順う。七十にして心の欲する所に従えども、矩をこえず。」

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闻一知十 / 一を聞いて十を知る

◆中国語:闻一知十   [ wén yī zhī shí ]

◆出典:論語(公治長)

◆意味:物事の一端を聞いただけで、全体を理解する。

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