馬虎な評価は火種を残す 中国でそれをやるとキツイ報復に見舞われるかも…

 

中国ビジネスを展開する現地の会社では、国家の法律の定めにより会社と社員の間で、「労働契約」を締結して雇用関係が成り立っています。

ところが、我が社でとんでもない出来事が発生しました。

ある時、勤続10年目を迎えたある中堅社員との労働契約の更新について、社内の幹部会議でNOの決定がなされました。彼の普段の勤務態度や素行が会社にとってふさわしくないという理由です。

この決定に対しその社員は激高し、あろうことか、お客様からの大切な預り物を勝手に持ち出し、返してほしければ金を出せとの要求を突きつけてきました。さて…

 

▮なぜ起きたその事件 強烈なしっぺ返し

中国でビジネスを行っている会社として国の法律に基づいて、きちんと運用していたにもかかわらず、なぜそのような強烈なしっぺ返しを受けたのでしょうか。

 

私が赴任した当時は、現在とは違う旧労働契約法のもとに大体1年契約を結び、毎年更新するような形式でした。契約の更新は毎年やってきますので、そのときには更新の是非を幹部社員と協議します。万が一、問題社員が発生した場合でも、最長1年待てば容易に契約解除(更新しない)ができるようにという会社側の思惑がはたらいていたようです。

しかし、社員数が増えてくると毎年の評価は結構手間がかかり、実態は、「まあ、いいか」というように判断が甘くいい加減な評価になりがちでした。

 

当時のルールでは、10年勤続の社員とは期限を切らない契約をすることになっていました。つまり、10年勤続社員との労働契約を更新する場合は、無期限契約をすることになり、会社としてはその社員の定年まで一定のリスクを負うことになります。

したがって、勤続10年を経過する社員に対する評価は、かなり厳格なものとなっていました。

そんな時に、その事件が起こりました。彼のとった行動はもちろん許されるものではありませんが、入社以来1年契約を9回も更新してここに至っているわけですから、今さら契約更新しないと言われても彼にとっては殺生な話です。

 

もし高卒で入社したのなら10年後は結婚をして子供ができそうな年頃です。30歳で入社したのなら10年後はちょうど子供の教育費がかかりだす頃です。

もし自分が会社からそんな仕打ちをされたら、きっと憤懣やる方ないことになっていたと思います。
人の気持ちを思いやることができていなかったと言わざるを得ません。

彼の場合、普段の素行に「問題」があったのなら、もっと早い時期に「更新しない」という結論を出すべきであったと思います。勤続10年に至るまで、本気で評価をしないまま更新を重ねてきた結果であり、起こるべくして起きた報復であったといえます。

 

▮大鍋飯の名残り

中国は計画経済化時代には大鍋飯と言われる考え方により、能力の高低にかかわらずもらえるもの(給料も)は皆同じという社会でした。市場競争経済時代になっていても、いまだに当時の風習が垣間見えるときがあります。

ですから人(地元幹部社員)が人(一般社員)を評価するという習慣はなく、むしろあまりやりたくないことで、得意ではありませんでした。

加えて、日本人総経理(社長)の部下である中国人幹部社員が一般の中国人社員の評価をするということは、場合によっては一般社員から「あなたは日本人の味方か、中国同胞の味方か」というようなことを言われかねないのです。そんなことを言われたくないということがあったのかもしれません。

よって「公平に」という耳触りの良い言葉の下で、人によって差をつけない(評価をしない)ようにしていたようです。もちろん優秀な社員とそうでない社員を同じ評価にすることの方が不公平なのですが。

 

▮評価に火種を残さない 予防策は?

そんなことで、日本式の業績評価を導入する際には格別の配慮をする必要があります。それは「数値化した評価」「優秀な社員には思いっきり高い評価を」「低評価社員へのフォローアップ」「評価は総経理(日本人)がリードするが、直接評価は現地幹部社員である各部門長が行う」、そういったことがポイントとして言えると思います。

例えば日常評価はまず直属上司が日頃の勤務実態について点数を付けます。それを部門長が是正し、その後、部門長や経営幹部などで構成する「評価委員会」のようなところで最終的な5段階評価を決定する。そんなプロセスです。

そうしておけば、評価を不服とする社員がいた場合にも、客観的に説明ができます。その際には、今後こうすればきっと評価は変わるよ、というように激励を合わせて行います。たいていそれで納得します。

また、中には「彼がB評価で、なぜ僕はCなのか!」と、直接総経理に言ってくる社員もいます。

そんな際には、「評価は他言無用という会社の規定だが、君はなぜその彼の評価を知っているのか、場合によっては処分対象になる。」と言えば、その社員はたじろぎます。さらに「評価は総経理一人ではなく評価委員会でやっている。不満があれば部門長に申し出るように。」と加えれば概ねは解決します。

 

評価は、社員にとって生活を左右する大事。会社も評価を行う際には少しでも気を抜いてしまうと足元をすくわれることが起きかねません。今風に言うと透明性を確保する、ということでしょうか。中国でビジネスを展開するには総経理としてこんなところにも十分な配慮が必要です。

そして、入社後、できるだけ早く個々の社員の能力や性格などが会社にとってふさわしいか、どうかを見極めて対応することが大事です。それが本人のためにもなり、会社のためでもあると思います。

>「成功のツボ カテゴリー別一覧」もご覧ください。

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▮中国ビジネスの成功を勝ち取る ことわざ・格言を解説

己所不欲、勿施于人 / 己の欲せざる所は人に施すなかれ

◆中国語:已所不欲、勿施于人   [ yǐ suǒ bù yù, wù shī yú rén ]

◆出典:論語

◆意味:人からされたくないことは、自分の方からも人にしない。他人の心をもって自分の心とするのが良い、との意。

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大锅饭 / 大鍋飯

◆中国語:大锅饭   [dà guō fàn]

◆意味:大きな鍋で炊いたご飯のこと。転じて、待遇がみな同じであること。

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以牙还牙 / しっぺ返し

◆中国語:以牙还牙   [ yǐ yá huán yá ]

◆日本語表記:以牙還牙

◆出典:旧约全书

◆意味:「歯には歯を」という“仕返し”の意味。真っ向から対立し報復することの例え。

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马虎 / 馬虎

◆中国語:马虎   [ mǎ hǔ ]

◆出典:生在难中

◆意味:気を配らず軽率なこと。いい加減。「马马虎虎」と同義。
◆なぜ「馬と虎」で「いい加減」になるのか、「马马虎虎(馬馬虎虎)」を引用した記事をご覧ください。

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>「現場目線で読み解く 中国のことわざ・格言」もご覧ください。

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