中国では性悪説を取った方がうまくいく

寒い冬を乗り越えてこそ花開く。脇を締めていこう。(大阪府堺市2018/03/04)

 

ある日系企業の社長さんは「社員を見たらドロボーと思え。」と過激な発言をしていました。また別の企業では、自社の試作品が市場で売られていたことがあったそうです。中国企業では、経理部門は総経理(社長)の身内で固めていることが多くあります。自社の社員はそう簡単には信用しないぞ、という声が聞こえてきそうな気がします。

長い歴史の流れをくむ現代中国社会における企業統治はどうあるべきか、日本人としてはよくよく考えなければなりません。悩ましい…ですけどね。

 

 

▮昔と変わらない経営者の悩み

日本でも自分が勤める会社に背任行為をはたらいたりする事案の他に、外部からこっそり侵入して物を盗まれる恐れがあります。一般的には、ドロボーへの対策をしっかりとしておけば一応安心できます。

一方、中国で仕事をしていると、外から侵入するドロボーよりも、むしろ身内の社員が絡む内部事案が多いのに驚きます。

例えば、製造工場では原料の持ち出しや製品の横流しなどの不正行為は、枚挙に暇がないくらいです。

果てはトイレットペーパーやボールペンの無断持ち帰りまで、しかもそれらは日常的に発生します。オフィス系の職場でも、社員が出入り業者からリベートを受け取ったりすることも少なくありません。そういう案件はそれこそどこの企業も多かれ少なかれ同様の悩みをもっているようです。

 

このようなことを放置していると、一般社員には管理のぬるい、いい加減な会社であるという印象を植え付けることになります。始まりはトイレットペーパー1巻であっても、その対応をおろそかにしていると、その結果は場合によっては経営に対して致命的な影響を及ぼしかねません。

 

 

▮中国では通用しない性善説

では、どのように考えればよいのでしょうか?

古来、日本では、小さな島国であることが影響しているのかもしれませんが、どちらかと言えば「性善説」によって運営されてきました。人間を信頼するところが物事の出発点でありました。

 

あるとき、新規に中国に進出した某著名日系企業に、私の会社が提供する商品を売り込みに行きました。私は、「外部からの侵入対策」と同時に「内部の不正防止対策」の両面で考える必要があるとの説明を経験値としてしました。

日本とは価値観が異なり、さらに会社への帰属意識も薄いので、自社の社員といえども100%信頼するのは危険であるからです。

その企業の担当の方は、自社の社員は悪いことはしないと信頼しているので、内部対策は不要である、とのお考えであることがわかりました。

 

▮実は性悪説の方が

日本人として、その考え方はよく理解できますし、そうありたいものですが、中国ではそうは言っていられないのが現実です。

 

「性善説」だけで考えていると、どうしても脇が甘くなり時として足元をすくわれてしまいます。会社備品の持ち帰りや、製品の横流しなど、不正事案が発覚すれば企業として対応せざるを得ません。つまり規定に照らして免職などの懲戒処分を下さざるを得ないことになります。その結果は、その社員はもとより、家族まで巻き込んでしまいます。

そんなことを繰り返していては、残念ながら中国現地の会社としての順調な発展は難しいと言わざるを得ません。

 

一般論ですが、現地の社員の会社に対する帰属意識はたいへん薄く、自分の利益度合を物事の判断基準としている社員が多い現実を見ると、会社を運営している立場からは、「性悪説」にならざるを得ないと言えます。

 

しかし、社員なくして会社は成立しませんし、まして社員はある意味で仲間ですから、疑っているだけではとても寂しいことです。この二律背反の中でどうすべきなのか。悩ましい問題ですが、総経理(社長)はこれに向き合わなければなりません。

 

▮社員を守るには性悪説

中国古典の韓非子には「抜け毛を惜しんで髪を洗わないのでは、洗うことによって新しい髪が成長するという利点を忘れることになる。」という意味の言葉があります。

 

事業者として、性善説によって理想を追求するのは悪いことではないが、現実にも性悪説をもって目を向けないと、すぐに足元をすくわれる恐れがある、との戒めの意味が含まれていると思います。要するにバランスをとった運営、総経理の匙加減にかかっていると言えます。

 

私の会社には監視カメラをたくさん取り付けてあります。

例えば、会社のパソコンで勤務中に遊んだり株取引をしたり、その他の不正を働かれては困りますので、その背後にカメラを取り付けて録画監視しています。これは一見して社員の動向を監視しているように見えますが、実は本当の目的はそれではありません。

悪事を働くとすぐにばれてしまいますよ、と社員の皆さんに訴えているのです。したがって、不正案件は起きにくくなります。すると結果として、会社を解雇されることもなく、そして家族が路頭に迷うこともなく生活ができることになります。つまり、監視カメラは帰属意識の薄い社員達を守っているのです。

 

日本人の私としては「性悪説」という言葉の響きには少々抵抗があるものですから、社員を守りたいという考えを込めて、あえて「新・性善説」と勝手に名づけました。

言い方を変えれば「性善説」と「性悪説」のバランスをとるということになります。両方を包含するのが「新・性善説」のイメージです。

»「成功のツボ カテゴリー別記事一覧」もご覧ください。

 

▮中国ビジネスの成功を勝ち取る ことわざ・格言

为政猶沐也 / 政を為すは猶お沐するがごとし

◆中国語:为政猶沐也   [wéi zhèng yóu mù yě]

◆出典:韓非子

◆意味:政治とは髪を洗うようなものである。

◆解説:髪を洗えば抜け毛が出るが、だからと言ってずっと洗わずにいるわけにはいかない。一方で洗えば新しい髪の成長を促すという利点もある。抜け毛を惜しんで利点を忘れてしまうことはバランスを欠いた考えである。

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人之性恶,其善者伪也 / 人の性は悪、その善なるは偽なり

◆中国語:人之性恶,其善者伪也 

◆出典:荀子(性恶篇)

◆意味:人の本性は悪であり、それが善であることは、人為によるものである。

(人間の本性は悪である。しかし、たゆみない努力・修養によって善の状態に達することができるとする説)

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»「現場目線で読み解く 中国のことわざ・格言」もご覧ください。

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