中国では黙認 真っ昼間 勤務中のマージャン そんなことになる訳

我が社が入っているテナントビルの1階に運転手控室なる部屋があります。入居しているテナント各社の運転手が待機している部屋ですが、前を通りかかった時、ドアの隙間から漏れ聞こえてくる何やら楽し気な声が…。訳を我が社の社員に聞いて唖然。
実はその部屋では運転手仲間がマージャンに興じているとのことです。世間話や自社の総経理の噂話などをしながら。あろうことか、勤務時間中に! そんなことが許される?

 

運転手が仲間でマージャン

それを知らないのは総経理(社長)だけ。会社の総務部や秘書などはもちろん知っています。総経理が外出するときには、運転手に連絡し、やおら駐車場に車を取りに行き、本来の仕事である運転業務をします。

彼らは、つまるところ運転する時間以外はマージャンで遊んでいるのです。

 

どうして、そんなことになってしまったのか?

実は、今でこそ自動車運転免許は多くの人が持っていますが、一昔前までは、限られた人しか持っていなかったので、車の運転ができる人は、ある意味で「技術者」でした。運転手には技能労働者に対する「师傅(日本語表記は師傳」という尊称もあるくらいです。

 

そういう過去があってか、総経理車両の運転手である社員が「運転」以外のことをするのは、むしろ普通です。一般社員も総経理とダブって見えるのか、彼らに対する遠慮があるようで、遊んでいても表立って文句を言う社員はいません。

 

運転以外は何もしない運転手

日本人総経理としては、遊んでいる時間も給料を払うのは到底容認できません。他の社員への影響も心配します。

そこで、運転手に、運転業務がない時に他の仕事をさせようとしました。すると、運転手の彼は「その分の追加給料をくれ」と。

「運転手」として採用され、その対価としての給料も労働契約書に明記されている。運転業務以外の仕事をしなければならないのなら、相当の給料の追加があって当然ではないのか、といのが運転手である彼の言い分です。

 

思わず、なるほどとこちらが納得したくなるような妙な理屈です。

しかし、そんなことが出来ようはずはなく、じゃあ、しばらくは今まで通り運転手をしておくようにと言って、討論は収束。

 

そのままで引き下がったのでは、総経理(社長)としてのその後のマネジメントにも影響しかねません。できる事なら“春風得意”と言える状態を自分で作り出さなければ面目が立ちません。

以後も、外出時には彼の運転する車に、何事もなかったように、にこやかに乗るのですが、腹の中では、彼との労働契約は、次期更新時には更新しないでおこう、と対応策を練るのです。

君と臣は打算で結び付く

君は臣を礼し、臣は君に忠である」と孟子は言い、一方、韓非子は「君と臣は打算で結び付いている」と言っています。

 

会社の総経理(社長)と社員の関係も、本来、総経理は社員を尊重し、社員は忠節を尽くすと、そうありたいものです。しかしそんな淡い思いは遠い昔の話。

現代社会でいえば、会社のためにわが身を犠牲にする社員などいない、という感じでしょうか。現実には皆が損得を計算し、自分の利益につなげようとしています。

もっぱら性善説の日本人にとしては、孟子の考えに同意をしたいのですが、現実はどう見ても韓非子の方ですね。少々切なくなりますがこれが現実…。

臨機応変

また、レストランでは、厨房で出来上がった料理をテーブルの近くの配膳台まで運ぶ係、それをテーブルの上にのせる係と 一人で十分できそうなことを二人がかりでやっているのをよく見ます。昔、計画経済のころに、少ない仕事をみんなで分け合ったことの名残りでしょうか。テーブル担当がそこにいなくても、運ぶ係員は決してテーブルには乗せないで、テーブル横の台に置けばさっさと持ち場に戻ります。料理が冷めようがお構いなし。

運ぶ人の仕事の分担には、テーブル担当がいないときには、自らがテーブルに乗せるとは書いていないのでしょうね。ちょっとした仕事範囲の越境を、お客のことを考えて「機に臨み変に応ず」、なんてことは現実にはないようです。

お役人の法規運用は過度に柔軟(?)ですけれど、一般の社員には難しい…。余分なことをして無用の摩擦や軋轢が生じることから、遠ざかりたいのかもしれません。

会社が社員を新しく採用するときには、安易に職掌名や担当名をつけたりすると後々そんな面倒なことになりかねません。現地の幹部社員にも一人で二役、三役をするような認識はあまりありませんから、総経理が、よくよく自分で考えて組織をリードすることが大切です。でないと、総経理自身がストレスを溜めこむことに事になってしまいますよ。

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中国ビジネスの成功を勝ち取る ことわざ・格言

君臣有义 / 君臣義あり

◆中国語:君臣有义   [ jūn chén yǒu yì ]

◆日本語表記:君臣有義

◆出典:孟子「五倫(ごりん)」。(儒教における5つの道徳法則)

◆原文:父子有亲,君臣有,夫妇有别,长幼有叙,朋友有信。

◆意味:上下の正しい道。君は臣を礼し、臣は君に忠であること。

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君臣之交计也 / 君臣の交わりは計なり

◆中国語:君臣之交计也  [ jūn chén zhī jiāo jì yě ]

◆日本語表記:君臣之交計也

◆出典:韓非子(飾邪編)

◆原文:君以计畜臣,臣以计事君。君臣之交

◆意味:君主は計算ずくで臣下を養い、臣下もソロバン勘定で君主に仕えている、との意。  君臣は所詮打算で結びついている。

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师傅 / 師傳

◆中国語:师傅   [ shī fù ]

◆意味:技能労働者に対する尊称。例えば名字が張さんという運転手さんには、今でも「張师傅  」と尊称をもって呼びかけるのがマナー。

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春风得意 / 春風得意(しゅんぷう とくい)

◆中国語:春风得意   [ chūn fēng dé yì ]

◆出典:唐·孟郊(登科后)

◆意味:事業などが順調で得意満面な様子。気持ちが愉快であることを形容した成語。

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临机应变 / 機に臨み変に応ず(臨機応変)

◆中国語:临机应变   [ lín jī yìng biàn ]

◆出典:旧唐书·郭孝恪传

◆意味:その時の状況の変化に応じて弾力的機動的に対応すること。「临机应变  」ともいう。

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