距離を縮めたり誤解を生んだり笑いを誘ったり… 禍は口より生ず

 

初めて中国・上海に赴任しようやく慣れ始めたころのこと。一時帰国のために上海浦東空港のチェックインカウンターに並んで順番待ちをしていた時、私の前に並んでいた小さな子供を連れた日本人のお母さんが、やおら、私の方を振り向き真顔で「日本語わかりますか?」って。もちろん日本語で。

 

 

▮日本人としてのアイデンティティはどこに…

突然で思いもよらない問いかけに面食らった私。一瞬の時をおいて思わず「少しなら…」と答えました。どうも、そのお母さんは列を離れた子供を連れ戻す間、スーツケースを見ておいてほしかったようです。

 

日本人としてのアイデンティティを否定されたようで、笑い半分、ちょっと気分悪さ半分の心持ちでありました。多分、私のことを日本人とは思わなかったのでしょうが、そう言ったのには何かの理由があったはずです。
例えば身なり風体が…。とすれば、私にとってはすごく意外な問いかけではあったのですが、「日本人に向かって何を無礼な…」などと抗っても、それでは世間の綾が薄れてしまう。
我を馬と呼ばばこれを馬と謂わん」とまで達観するのは私如き凡人には無理ですが…。

 

 

▮中国語で話しているのに「日本語、わかりません」と返された

大連で私が住んでいたアパートメントで、ある時、突然、部屋が停電しました。

そこにはフロントがあり日本語を話す中国人スタッフもいました。

しばらくしても、停電が復旧しません。当時の私は、社内の会議を中国語で行うほどになっていました。もちろん通訳なしで。そこで、内線電話でフロントに復旧の予定を何も迷わず中国語で尋ねました。

すると、フロントのスタッフはたどたどしい日本語で「私、日本語わかりません。」と言うのです。

 

何ということ…私は自慢の中国語で話しているのに。

再度中国語で尋ねたのですが、同じ答えが返ってきました。いささかショックを感じつつも、埒が明かないと思いあきらめました。

翌日会社でその話をしたら中国人社員のみんなから大笑いされました。

 

実は、フロントでは内線電話がかかると部屋番号が表示されます。そして、フロントでは、その部屋には日本人が住んでいるということがわかります。ということで、フロントの中国人スタッフは、日本人が中国語をしゃべるはずはないという先入観があったのでしょう。それとも私の話す中国語が中国語とは思えない発音だったのでしょうか。
いやいや、そんなはずはない、と思いたいのだが…。

いずれにしても「先入を主」としては失敗の原因となることを学びたいものです

 

▮日本語が上手ですね

懇意にしていた中国人のある事業家が、ある時、彼の友人である日本人を私に紹介してくれました。

私は紹介を受けた日本人の方に、簡単に挨拶をしたところ、その方から「日本語がとてもお上手ですねぇ!」と言われたのです。

 

その中国人事業家は日本語ができませんので、中国語で私に紹介してくれたのですが、その日本人は中国語ができません。中国人が中国語で紹介したのですから、その日本人は私のことをてっきり中国人だと思ったのでした。

 

日本語がうまいと褒めてくれたその日本人に対して、私は「あの~、私は日本人ですから…」と対応。彼はびっくり! そしてお互いに大笑い。

人間って思いこむとこんなことになってしまうのですね。思いこみを戒める経験でした。

 

 

▮ちょっと下ネタ…

大連の地元金融機関幹部との会食の席上でのことです。私の両側には顧客の中国人が着席していました。

左側の方とは、「いつ日本から大連に戻ったのか」という話題。ちょうど一時帰国から戻った直後でしたので、彼はそう尋ねてくれたのです。

 

その時、私は中国ではタクシーに乗ることを「打出租車」という風に「打」を使うことを知っていましたので、「昨日飛行機で帰った」という意味のことを言うところを、「打飛機」と表現してしまいました。(※「出租車」はタクシーのこと。「飛機」は飛行機のこと)

 

その話題の直前に、右側の方とは「毎日何をしているのか」ということについて話していたのです。たまたま、右側の方は、その話題の途中で別の方とお話をしていました。

で、私の方を向き直ったときに「打飛機」と私が発した言葉を聞いたのです。

 

なんで「打飛機」というのでしょうね?(写真は空飛ぶパンダ)

中国で「打飛機」とはマスターベーションを意味する隠語です。つまり右側の彼は、私に「毎日何してる?」と聞いたところ「打飛機」と私が答えたと理解したのです。

彼は絶句し目を丸くしていました。誤解が解けた時に、みんなで大笑いが…。

飛行機の乗ることは「座飛機」というのが普通です。まあ、私のちょっとした間違いが座を和ませたということにしておきましょうか…。

 

▮口は禍のもと

言葉に関する私の経験談は他愛もない今となればただの楽しかった笑い話です。しかし、時と場合によってはそうはいかないことがあります。

禍は口より生ず」と古来、中国では言われています。まして、会社の総経理(社長)や老板(経営者)といった組織を代表する立場にある人は、自身の発言には十分注意をしなければなりません。

何でもない問題をこじらせてしまったり、最悪の場合は、皆から総スカンを食らうことにもなりかねません。自らの事業を発展させるためにも、無用のトラブルの発生は避けたいものです。

»「成功のツボ カテゴリー別記事一覧」もご覧ください。

 

▮中国ビジネスの成功を勝ち取る ことわざ・格言

呼牛呼马 / 牛と呼び馬と呼ぶ

◆中国語:呼牛呼马   [ hū niú hū mǎ ]

◆日本語表記:呼牛呼馬

◆出典:荘子(天道)

◆意味:何と言われようと気にせず、言うにまかせる事。

◆背景:老子を非難したある男に対し何も反応しなかった。その理由を老子は「私を牛と呼べば私は牛と思う。わ私を馬と呼べば私は馬と思うだけだ。なぜなら、人がそういうのにはそれなりの根拠があるはず。それに逆らえば災いを被る。」と。

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无以先入之语为主 / 先入を主となすことなかれ

◆中国語:无以先入之语为主   [ wú yǐ xiān rù zhī yǔ wéi zhǔ ]

◆日本語表記:無以先入之語為主

◆出典:漢書(息夫躬传)

◆原文:唯陛下观览古今,反复参考,无以先入之语为主。

◆意味:先入観や固定観念にとらわれてはならない、との意。

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情欲意識、尽属妄心 / 情欲意識は、尽(ことごと)く妄心(ぼうしん)に属す

◆中国語:情欲意識、尽属妄心   [ qíng yù yì shí, jǐn shǔ wàng xīn ]

◆出典:菜根譚

◆意味:とらわれた先入観、思いこみのすべてが妄心である。とらわれた常識を捨て虚心になってこそ、本当の心をつかめる、との意。

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祸从口出 / 禍は口より生ず

◆中国語:祸从口出   [ huò cóng kǒu chū ]

◆日本語表記:禍従口出

◆出典:晋朝·傅玄《口铭》:“病从口入,祸从口出。”(病は口から入り、禍は口から出る)

◆意味:うっかり発した言葉が思いもかけない禍を招くことがある。不用意な発言はしないこと。口は禍のもと。

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»「現場目線で読み解く 中国のことわざ・格言」もご覧ください。

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