中国では法規制と人治の両方のハードルを越えることが求められる

 

 

中国の考え方は、よく言えば「臨機応変」で弾力性に富んでいる。

法律や規定、或いは上からの指示などが示されたとしても、
それはそれとして、現場ではそういうわけにもいかないので、…の運用をしておこう、などと。

日本人としてはとてもじゃないがついていきかねる内容であっても、
長い長い歴史の中で育まれた運用の術です。

それを理解し受け入れることも現地で采配を振るうには必要なことです。

 

 

 

マイナス30度の瀋陽

中国東北部の遼寧省の省都は瀋陽市。同省の南端に位置している大連からは北へ約400kmのところにあります。

2000年4月に大連に着任したその年の冬に、私は初めて瀋陽市へ出張しました。

瀋陽市は遼寧省の省都で、人口800万人の大きな街です。大連よりも一回り大きな街であり、一度見ておこうというのが出張の目的です。

 

大連より北寄りで且つ内陸にあるため、寒いのは覚悟していましたが、訪れたその日の瀋陽の気温はなんとマイナス30度! 真冬とはいえとにかく寒かった。

日本の関西育ちの私には、人生で初経験の寒い世界でした。道路もつるんつるんに凍結していて普通の革靴で行ったものですから、何回か転んでしまいました。

 

さて、当時の街の様子はというと、街の規模は大きいのですが、何せ無秩序。幹線道路といっても車線どころか中央線の表示もなく、人、車、自転車などが好き勝手に行き来していました。

こんなところで我が社はとても商売はできないと思い、二度と来ることはないであろうと、寒かった思い出だけを持って瀋陽を後にしました。

 

そんな瀋陽市に分公司(支店)を開設しました

実はその翌年、以前からあった瀋陽で唯一の取引先を訪問するため、再び瀋陽市を訪れました。

私はとても驚きました。街が1年前とは様変わりしていたのです。道路もちゃんとなっていました。それに街のあっちこっちでビルが新築されています。

 

中国の大きな街は変わり始めると、とてつもなく速いスピードで変化することに私は気がつきました。
そろそろ支店でも出そうか、と思える時は実はもう遅いのです。

ちょっと早いんじゃないか、というくらいのときに出ていかないと、乗り遅れてしまいます。

 

そこで、さっそく、我が社の瀋陽分公司(支店)を設立登記しました。2002年のことです。この手続きはいたって簡単で一週間くらいで完了しました。

 

設立した瀋陽分公司が開店休業状態

さて、問題はここからです。

登記も終わり準備ができたので、瀋陽の業界筋に挨拶をするため、人を介して会食をアレンジしました。そこで挨拶のあと趣旨を説明したところ、相手からの言葉は意外なものでした。

曰く「外資企業の瀋陽進出は、市場を掘り起こすパワーにつながる。よって歓迎する。しかし瀋陽の業界及び市場は少々乱れている。そのあたりの整理がついた頃から仕事を始めた方がよいと思うので、開業は少し待ってください。」という趣旨でした。

よくよく聞いてみると、どうも、実際にはあまり歓迎されていなかったようです。

 

まぁ、既存の落ち着いていた業界に、言わば割って入るわけですから、さもありなんというところでしょうか。

法律や規定の上での条件は満たしていたので、歓迎されていなくても、開業できなくはなかったのですが、やんわりと拒否している相手に対して、ゴリゴリ突き進むのもよいとは思えませんでしたので、時が来るのを待つことにしました。

 

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適法であってもダメなものがある…?

それから何か月たっても何の変化もないので、手を変え品を変え打診しましたが、のらりくらりとかわされ一向に埒が明きません。開業の条件は整っているのに、業務を始めることができないなんておかしいではないか。憤りを覚えていました。

 

そんな時、現地社員から、中国の巷間では「说你行你就行,不行也行;说你不行就不行,行也不行」と言うではないかと教えられました。

まるで禅問答のような中国語です。それは、「上(上司、お上など)がYesと言えば、たとえダメなものでもOK。反対に上がNoと言えば、たとえ本来OKのものであってもダメだ」という意味だと教わりました。

私が設立した瀋陽分公司は法律上は何の問題もないのですが、その地の政府機関が(お家の事情があって)「Yes」とは言わないので、事実上事業を始めることができないというのです。長い物には巻かれろといったところでしょうか。

 

運用幅の広さが

人治の最たるものです。しかしそれはある意味で、言いえて妙である言葉ではないかと、思いました。規則は規則として、運用はそれとは別にあるということ。

私もそれに倣い、以後の会社運営にはその考え方を活かすことにしました。

結局、中国で会社を運営するということは、様々な要因や背景の中で必死に頭をめぐらし、策を練って実行する必要がある、ということだと思います。

地場の経営者たちは、そのためにたくさんの人脈を持ち、日々活動しているというわけです。

しかし、肝心の事業展開ができないままで引き下がるわけにも行かず、毎月1回は瀋陽に出張して更なる根回しや準備を重ねました。
そして、分公司設立から約2年後の2004年6月、ついに実際の仕事を始めることができました。

 

人治の重要性は今も

中国では日系企業は法規定を遵守することはもちろんですが、あわせて人治のハードルを越えないと事は運びません。

 

その後一歩一歩努力を積み重ねて顧客が少しずつ増えて行き、瀋陽分公司は会社としての体をなすまでになりました。
そして、2009年11月には新たに瀋陽現地の中国企業と合弁をした独立会社に改組しました。
そのことにより、5年余り続いた私の瀋陽市における事業展開の責任は一段落し、以後は大連エリヤに専念することになりました。その間の瀋陽における紆余曲折はずいぶん勉強になりました。

 

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 ♣♣♣ 中国ビジネスの成功を勝ち取る ことわざ・格言を解説 ♣♣♣ 

 

说你行你就行,不行也行;说你不行就不行,行也不行。不服不行

◆日本語表記:说=説

◆注釈:しかるべき人(上司、政府、党中央等々)がYesと言えば、たとえダメなものでもOK。反対にしかるべき人がNoと言えば、たとえ法律などに則りOKであっても実際にはダメ、服さないのはダメ、という意味。

◆アメリカの教育心理学者によって、提唱された教師期待効果(ピグマリオン効果)の主旨を中国語で表した言葉。

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[解説]

 

「瀋陽市」

◆中国語表記:沈阳市

◆遼寧省の省都、中国東北地方の中心都市で、交通の要衝になっています。

◆常住人口は約800万人。

◆1月の平均気温はマイナス10度、同最高気温はマイナス5度。冬はとても寒い!

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