えらいこっちゃ 大事件勃発! そんな時… 三国志・趙雲は【満身是胆】と

2002年11月に広東省でSARS(重症急性呼吸器症候群)が勃発。あろうことか翌年の3月には大連に飛び火したのです。

中国全土を揺るがしたこの事件、現地に進出していた多くの日系企業では駐在員が帯同していた家族が帰国。中には駐在員自身も帰国し、周囲から日本人がいなくなってきました。

日本本社では出張禁止令が出されとうとう誰も来なくなった。ここって危険地域?

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苦手なロビイング

 大連でSARS騒動が発生した2003年3月、私にとってもうひとつの出来事がありました。現地のある日系企業の総経理(社長)さんから現地商工会の世話役になるよう要請がありました。その商工会は会員間の親睦や情報交換など多岐にわたる活動をしていました。

 商工会の世話役はそれ以外に別の役目があり、私の場合は現地日本人学校の運営責任者を、とのことでした。当時は大連に赴任してまだ三年、不慣れなことが多く、それに本業の方も決して順調という訳ではありませんでした。

 ロビイングは下手ですし、何よりそんな柄ではない私でしたが、一年交代でちょうど次が私の順番だと言われ受けることにしました。やむなく不安を抱えてスタートした商工会活動。その矢先、SARSという重要案件が勃発したのです。

菖蒲の花

菖蒲の花 東京・皇居にて

乱七八糟

 SARSは中国では「非典=非典型肺炎」と呼ばれ、誰もが経験したことのない感染病でした。会社では毎朝出勤してきた社員の体温検査をしたり、帯同家族の帰国手配、業務上の顧客訪問時の対策等々、対策に忙殺されました。

 担当する日本人学校では、生徒たちにもしものことがあってはなりません。学校の運営理事会として休校や帰国した生徒たちへの対応など緊急案件が次々と。タイミングが悪いことにその頃は年度替わりの狭間で理事会がまだ構成されていませんでした。

 順番だということで引き受けたもののとんでもない大問題に遭遇し、本業の業績とともに私の頭はしっちゃかめっちゃか。中国で古くから言われる「乱七八糟」とはこのことです。

満身是胆

 日本本社から空輸されたマスクをつけて仕事をしている日本人を見て、マスク着用の習慣がなかった現地の社員達の目には奇異に映ったことだと思います。

 一時的に帰国させることになった日本人社員の帯同家族は、帰国後一定期間は会社の保養所に“隔離”され、「まるで、ばい菌扱いだ」と憤慨していました。また、本社は社員に対し中国への出張を禁止する指示を出したと聞きました。

 まるで「危険地域」扱いです。でも私たち駐在員は、その「まるで危険地域」で仕事をし、生活をしていたのですが、マスクの他には特に何もなし。「私ならこんな時にこそ現地に入って仲間の社員を激励するのだが…」と一人でブツブツ。

 SARSのような感染症が蔓延する以外にも、例えば地震や台風などの自然災害、政情不安、カントリーリスクなど、大きな出来事に見舞われることがあります。現地に駐在をし、会社を運営していてそんな事態に遭遇した時に、さてどうすればよいか。

 現地の日系企業の一部には駐在社員自身も一時帰国し難を逃れるところもあったようです。しかし、会社には逃げ場所のない多くの現地社員がいます。もし、駐在している我々日本人が一時的であろうと帰国したら、彼らはどう思うでしょうか。敵前逃亡と思われても仕方ありません。SARSが終息し、日本から現地に戻った時にどんな顔をして彼らに接すればよいのか。

 それでなくても、とかく現地社員からは「日本人駐在員はどうせ腰掛」と思われがちです。日頃の行動はもちろんですが、特に「いざ」という場面での駐在員の態度・姿勢は強烈に印象に残るはずです。

 三国志の中に、たった一騎で曹操軍と対峙し微動だにしなかった趙雲をさして「満身是胆」と感嘆したというくだりがあります。これが駐在員としてあるべき態度ではないでしょうか。

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臨難苟免

現地社員の仲間達、それに多くの顧客に対応する責任者として、現場から退避することなど私には考えられませんでした。たとえ、日本本社から支援がなくても、自分の周囲から日本人がいなくなっても、ここで頑張るぞ、との意気でした。

 そう腹をくくると、不思議と心が落ち着き、打つ手が見えてくる。そして、その姿は社員にどれほど頼もしく、また誇らしく映ったのではないかと思います。

 中国の古典である礼記には「難に臨んでは苟(いやしく)も免れんとするなかれ」と書かれています。何があろうと逃げ出してはならないというのです。

 何があろうとも、自分の会社を守る、社員を守る、顧客を守る、総経理(社長)たるものはそういう決意に立つべきだと考えます。

 その後2年間にわたり商工会や学校の活動を手弁当で行いました。本業と掛け持ちでしたので大忙しで大変でしたが、日中双方の様々な方々と親しくさせていただき、またとないよい思い出になりました。

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重症急性呼吸器症候群(SARS: severe acute respiratory syndrome)

SARSは2002年11月16日に、中国南部広東省で非定型性肺炎の患者が発生。その後、32の地域や国々へ拡大した。2003年3月15日にWHOは、原因不明の重症呼吸器疾患としてsevere acute respiratory syndrome(SARS)と名づけ、「世界規模の健康上の脅威」と位置づけ、異例の旅行勧告も発表しました。

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成功のヒント 中国のことわざ・格言

满身是胆 / 満身これ胆なり

◆中国語:满身是胆   [ mǎn shēn shì dǎn ]

◆出典:三国志(蜀书•赵云传)

◆背景:蜀の将軍の趙雲(字は子龍)は、曹操軍が本陣まで追撃してくると、その陣門を開き、たった一騎で曹操軍と対峙した。曹操軍は微動だにしない趙雲に恐れをなして撤退した。このことから劉備は「子龍は満身これ胆である」と感嘆した。

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乱七八糟 / 乱七 八糟

◆中国語:乱七八糟   [ luàn qī bā zāo ]

◆出典:曾朴(孽海花)

◆意味:毛先ほどの秩序もなく、ひどい様子。めちゃくちゃ。

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临难苟免 / 難に臨んでは苟も免れんとするなかれ

◆中国語:临难苟免   [ lín nàn gǒu miǎn ]

◆出典:礼记(曲礼上)

◆意味:困難に遭遇しても逃げ出したり、たじろいではならない。

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