狡兎三窟 一筋縄ではいかないのが中国 突然のチャイナリスクに…

 

私は2000年4月に大連に着任。その約3カ月後、政府当局から突然、一通の通知文書が届きました。国有企業など政府関連施設に対する新規顧客開拓の営業活動の禁止、既存の同様契約の更新は禁止するといった内容で、我が社にとっては寝耳に水の出来事でしかも死活問題です。さて、困ったことになった…

 

 

▮チャイナリスクが降りかかる

それでは自由な企業活動ができないことはおろか、会社として営業活動が極端に制限され、最悪の場合、中国から撤退せざるを得なくなりかねない存亡の危機です。

 

実は、わが社は政府系の企業と合弁を組み、その結果、上述の通知文書にあるような制限は受けず、自由な営業ができていました。

ところが、1999年末に政府系企業は民間企業と合弁してはならないとの通達が出されたのです。突然でしたが、やむを得ず我が社はその合弁を解消せざるを得なくなり、一旦は独資企業の形態をとることになったのです。

 

しかし独資形態になればなったで、もともと省条例にあった外国独資企業は政府関係機関等に対するサービス提供をしてはならないという規定に抵触することになり、業務停止の通知文書発行に至ったという次第です。

合弁を維持できなくなった原因は我々にあるのではないのにもかかわらず…。

政府による突然の方針変更によって、自由な事業活動が影響されるのは、中国ではよくあること、と言えばそれまでですが、このチャイナリスクともいうべき大問題が降りかかってきたのです。

 

▮渡りに船

たった一通の文書によって、企業活動が制限され、それに対する有効な対応策が見い出せず、会社責任者として困り果てていました。

 

そんな時に1993年、会社設立時に支援していただいた方が、わが社が対策に窮していることを聞きつけ、手を差し伸べてくれました。新しく合弁をスタートさせたらどうか、と提案してくれたのです。ちょうど渡りに船を得た如くに、その話に乗ることになりました。

 

それを受けて、日本本社との間に立って交渉し、基本的合意に至りました。その後も合弁協議はとんとん拍子に進み、2001年7月には改めて日中合弁企業として登録することができ、ついに大きな難題は解消されることになりました。

 

パートナー側から1名の方に董事会(役員会に相当)に入ってもらい、経営陣の構成も固まりました。その協議の中で、パートナー側は対外的な対応を重点とすること、当方は会社の経営や内部運営を行うというふうに仕事の分担も明確にしました。

会社にとって死(撤退)を免れないような状態からの逆転劇が始まったのです。

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▮合弁が成功すれば事業は発展する

合弁会社の運営については、日本では暗黙の了解などという曖昧な状態であることが少なくありませんが、中国では、はっきりとした方がパートナー側もやりやすくなり、お互いに良いと思います。合弁契約書とは別に運営合意内容を文書にまとめ、双方が保管することとしました。

 

上海で経験した「同床異夢」になってしまってはならないと考えました。双方が向かい合わせになって対峙するのではなく、両者が同じ方向を向くことが大切で、そうすれば業容の発展に寄与することは間違いありません。

 

合弁が失敗する多くの原因が、日方中方間のコミュニケーションの不足にあるのではないかと私は思います。そのため、私はパートナー側から派遣された董事(役員)の方と、毎朝意見交換を行い、コミュニケーションを十分取ることにしました。それは私がいた2012年末までずっと継続し、双方の意思疎通を見事に成し遂げ、そのことが、業績向上や会社発展の上で、大きな力を発揮したのではないかと思っています。

 

 

▮狡兎三窟

中国で商売をし、且つ拡大していくためには…

きれい事や正直だけではうまくいくわけがありません。古くから中国では、賢い兎は巣穴を三つ持っている、といわれます。一つつぶされてもまだ二つ、二つつぶされてもまだ一つある。

そうやってとにかく生き残りを図る、という言い伝えです。そう、中国では「賢く」生きなければ成功という栄光は得られないのです。

 

何が起こるかわからない中国、”賢い兎”のように、会社も収入源を三つもって経営を安定させ、日頃の運営についてもがっちりとした三本の柱で安定させなければなりません。

経営も運営も柱が一本ではすぐにぐらついてしまいます。二本でも不安定でなかなか自立できません。

「会社の幹部社員」という柱、「社外の協力者」という二番目の柱に加え、この新たな合弁により、対外対応をしてくれる三番目の柱を持つことができ、わが社は安定した会社運営が可能になりました。

 

▮ 厳しい社会で備えに知恵を絞る

さて、この第二次合弁は極めてうまく、そして気持ちよく展開できました。そして安心して事業展開ができるありがたさを嫌というほど感じさせられました。この大事件を克服したことを境に会社発展のスピードがぐんぐん上がっていくことになりました。

 

古来中国の兵法書である「兵法三十六計」には、戦いに勝つ方策を解説してあります。誤解を恐れずに言うならば、それらの言わんとするところは、いかにして相手を攪乱し、騙し、味方を有利に導くかということであると思います。

そういう厳しい現実の中で生き抜かなければなりません。そのリーダーとして、智恵を絞りに絞って戦うことが必要です。

社員の向こう側には妻や子供たちといった彼らの家族がいて、その生活が懸かっているのです。中国独特のカントリーリスクも時には立ちはだかってきます。

会社を守り、社員達を守るには、せめて三つくらいの備えがないと対応しきれません。賢い兎のように十分な備えをもって患いをなくす、でなければ生き残れないということです。

»「成功のツボ カテゴリー別記事一覧」もご覧ください。

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▮中国ビジネスの成功を勝ち取る ことわざ・格言

事出意外 / 寝耳に水

◆中国語:事出意外   [ shì chū yì wài ]

◆出典:清·曹雪芹(红楼梦)

◆意味:思いもよらない出来事に驚くことを例えた言葉。

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绝处逢生 / 渡りに船

◆中国語:绝处逢生   [ jué chù féng sheng ]

◆日本語表記:絶処逢生

◆出典:明·冯梦龙《喻世明言》

◆意味:死地にあって命拾いをする。九死に一生を得る。絶体絶命の境地で活路を見いだす。

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狡兎三窟 / 狡兎三窟

◆中国語:狡兎三窟   [ jiǎo tù sān kū ]

◆出典:『戦国策』

◆原文:「狡兔有三窟 僅得免其死耳」

◆注釈:賢いうさぎは三つの巣穴を持つ。狡賢い者は用心深く難を逃れるのが上手いという意味。

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有备无患 / 備えあれば患いなし

◆中国語:有备无患   [ yǒu bèi wú huàn ]

◆日本語表記:有備無患

◆出典:左传(左傳)襄公十一年

◆原文:“居安思危。思则有备,有备而无患。”

◆意味:日頃から準備をしておけば、万一のことが起きても心配することはない。

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»「現場目線で読み解く 中国のことわざ・格言」もご覧ください。

 

 

 

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